緑肥作物が病害虫被害を減らせるのはどうして?

草丈が高くなるムギ類(写真はエンバク)で菜園の外周に沿って壁を作れば、風よけや害虫の飛来防止にも 撮影:福田 稔
緑肥作物には、病気や害虫の被害を軽減する効果があります。どのような仕組みによるものなのか、園芸病害虫防除技術研究家で農学博士の根本 久(ねもと・ひさし)さんに教えていただきました。

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■病原菌や害虫に直接影響を与える

病害虫に対する緑肥作物の働きは、大きく2つに分けられます。1つは、害虫や病原菌の生育を妨げたり、忌避物質を出したりして被害を減らすもの。これらの効果を得るには、栽培後、土にすき込んで腐熟させます。
例えば、エンバクの野生種(「ヘイオーツ」「ネグサレタイジ」など)は、アブラナ科だけに発生する根こぶ病を抑制します。エンバクを育てると、「おとり」になって根こぶ病の病原菌を集め、土の中の病原菌の密度を下げるのです。その結果、エンバクのあとに作る野菜に病気が出にくくなります。エンバクの野生種には、土にすき込むとキスジノミハムシを忌避する効果もあります。
多くの野菜に被害をもたらすセンチュウの密度を下げる効果も緑肥作物にはあります。効果が明記されているものを使うことが大切です。

■天敵を増やし、間接的に被害を減らす

もう1つは、緑肥作物が、野菜につく害虫の天敵を呼び寄せたり、増やしたりすることで害虫の被害を減らす効果。緑肥作物を育てるだけで効果が得られ、次の3つのタイプがあります。
【1】花の蜜や花粉が天敵を呼び寄せるもの。クリムソンクローバー、マリーゴールド(多くのフレンチ種)、ソバ、ブルーサルビアなど。【2】緑肥作物に発生する虫や花粉がエサとなって天敵を集め、さらに集まった天敵が増えていくもの。ソルゴー、デントコーンなど。【3】天敵にすみかを提供するもの。クローバー(「フィア」など)、オオムギ(「百万石」など)、ヘアリーベッチなど。
■『NHK趣味の園芸 やさいの時間』2020年10・11月号より

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