「酒」は米のだし

鶏肉とかぼちゃの煮物 撮影:蛭子 真
連載「割合でつくる だしいらずの和食」では、京都の老舗料亭の3代目、村田吉弘(むらた・よしひろ)さんが「だし」のかわりにうまみたっぷりの食材を使った料理を紹介しています。今月号のだしがわりは鶏もも肉、かれい+酒。村田さんは「酒は調味料でもあり、だしでもあるのです」と話します。

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意外に思われる方もいてるかもしれませんが、われわれ和食の料理人は、酒、つまりは日本酒を調味料というよりむしろ、「だし」だと考えています。
かつお節が魚のだし、昆布が海藻のだしだとすれば、酒は米のだしです。日本酒は発酵によって、うまみの素(もと)であるアミノ酸が豊富に含まれています。
日本料理には「すっぽん煮」という名前の調理法がありますが、これは酒をたっぷり使って煮る方法のことです。
酒は、くさみを抑えながら素材を柔らかくし、さらにコクを加えてくれるので、すっぽんに限らず、くせを感じる肉や魚を煮るのに最適な「だし」だと思います。
また、完全にアルコール分をとばしてしまわなければ、酒はかつおと昆布のだしなどより、腐りにくいという利点もあります。
料理屋がつくるおせち料理は、実はふだんの料理より、酒をたっぷり使っていること、知ってはりましたか? おせち料理は、何日かかけて食べるので、腐りにくいように、酒をだしがわりに多く使っているのです。ですが、おせちを食べても酒の存在をそないに感じないと思います。やはり、米を主食にしているわれわれ日本人にとって、酒のだしは舌になじむ味わいなのだと思います。
今月は、その酒を多めに使った肉と魚の煮物を一品ずつご紹介します。いつものように、しょうゆとみりんは1:1です。煮物の場合、その8倍の水分量が基本です。今回は水と酒を半々にした、1:1:4:4です。魚や肉の煮物の場合、この割合を覚えておくと重宝します。魚、肉から動物性のうまみは出るので、かつおだしはもともと不要。うまみは、別のタイプのものを組み合わせて使うものと、覚えておいてください。
※つくり方はテキストに掲載しています。
■『NHKきょうの料理』連載「割合でつくる だしいらずの和食」2020年6月

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