ブラックまではいかない"グレークレーム"、どう対応するべき? 約30社の実践的な方法をマンガで解説
- 『グレークレームを“ありがとう! "に変える応対術』
- 天野 泰守,日本対応進化研究会
- 日本経済新聞出版
- 1,430円(税込)
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多くの企業が設けている顧客応対部門。いわゆる"お客さま担当部門"といわれる部署には、日々多くのクレームが寄せられます。常識的で善良な「ホワイトクレーム」から、法的措置を検討するほどの「ブラッククレーム」まで、さまざまです。その中でも最近増えているのが、その中間の「グレークレーム」。個々のケースで状況が異なるため、応対に苦慮する担当者も多いようです。
そこで、カルビーやゼンショー、ワールドなど約30社のお客さま担当部門のリーダーや法律事務所の弁護士により作られたのが本書『グレークレームを"ありがとう!"に変える応対術』です。最新の実践的な"お客さま対応マニュアル"がマンガでわかりやすく解説されています。
1章となる「グレークレーム応対事例」では、電話応対や接客の担当者が直面しやすい20のグレークレームをピックアップ。お客さまと応対者のやりとりをマンガで描きながら、お客さまに「ありがとう」と満足してもらえる結末へと向かう道筋を示しています。
たとえば、カレーチェーンのコールセンターに寄せられた「テイクアウトしたカレーにトッピングのチーズがなかった」というクレーム。ここでは
・お客さまの強い口調に対して、どのように応対すればよいか?
・プラスアルファの要望にはどう応えればよいか?
という2点がお悩みポイントとなります。
電話の相手は「とっととチーズ持ってこいよ!」と、そうとう立腹している様子。これに対しては「強い口調に動揺することなく、状況確認と正確な説明をしましょう」(本書より)とのこと。こうすることで、勘違いや思い違いをしている相手も冷静に受け止め、気づきにつながるといいます。
では、「こんなに迷惑かけてるんだからチーズだけ持ってくるってことはないよね?」という追加の要求はどうでしょうか。あまりに強く出られるとついつい応じてしまいそうになりますが、こうした過剰要求には応える必要はないのです。「不手際があったとして、それがなかった状態に戻せば法的責任は果たされたことになります」(本書より)というのがその理由です。
以上のことから、「強い言葉に焦ることなく平常心を持って応対する」「原状回復以上の要求には毅然とした態度で臨む」というのがベストな応対だと解説。
明らかにブラックと言えない場合、どこまで相手の要求に応じるのか、どんな言葉でこちらの意思を伝えるかは、非常に判断が難しいものです。本書は実務経験に裏打ちされた心理分析、そして法的な面からの助言の双方のアプローチがあり、応対マニュアルとしてたいへん参考になることと思います。
このほか2章では、職場や組織のリーダーなどに向けた、顧客応対部門のあり方などについても解説。こちらはマンガ形式ではありませんが、中堅以上の担当者は有益な知識を得られるはずです。
グレーであるということは、応対次第ではホワイトにもブラックにもなり得るということ。相手をクレーマーにすることなく、最後には「ありがとう」の言葉を引き出せるよう、お客さま対応に悩んでいる人は、本書の応対術を参考にしてみてはいかがでしょうか。