2年連続の同一カードは史上初! 一力遼vs.井山裕太のNHK杯決勝

左/一力遼NHK杯選手権者、右/井山裕太棋聖 撮影:小松士郎
67年のNHK杯史上初めてとなった、2年連続同一カードでの決勝。連覇に燃える一力遼(いちりき・りょう)NHK杯選手権者と、3度目の祝杯を狙う井山裕太(いやま・ゆうた)棋聖による激闘が繰り広げられた。

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■連覇か、3度目の戴冠か

昨年、NHK杯3連覇を一力に阻まれた井山だが、決して調子が悪いわけではない。最近は各棋戦で挑戦者に手が届くところまできており、むしろ調子は上向きと言ってもいいくらいだ。
準決勝で張栩九段を破るなど、ベテランから若手まであらゆる年代の強敵を倒しての決勝進出だ。
対する一力も各棋戦で好調で、事実上の決勝戦とうたわれた準々決勝でも芝野虎丸名人を堂々と押し切り、その勢いにますます拍車がかかる。
昨年の両者の対戦成績は一力の2勝。一力が連覇を果たし、時代を変えるか。それとも井山が底力を見せ、若手の壁として立ちはだかるのか。
衆目を集めた一局。碁盤の下半分が、がらっと空いた状況での終局を誰が予想したであろうか。

■強い井山、完全復活

井山の完封勝ちだった。
「一局を通して自分らしく打てて、満足」という局後の井山のコメントが、すべてを物語っていた。
38手目、白番の井山が「研究はしていませんでした」という決断の一手が、一力に大ダメージを与える。一力の捨て身の反撃に井山は最強の手で応じ続け、128手という短手数で幕を閉じた。
「強い井山」が帰ってきたと断じてもよさそうな、今回のトーナメントを通じての井山の充実ぶりであった。
4月から始まった第68回NHK杯の出場者は、20代以下が半数、そして初出場が5名と若返りがさらに進む。井山が強さを見せつけるのか、それとも新星が現れるのか。誰が主役の座に躍り出るのか、目が離せない。
※棋譜と観戦記はテキストに掲載しています。
※肩書はテキスト掲載当時のものです。
■『NHK囲碁講座』2020年5月号より

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