入浴の効果と「銭湯ならでは」のメリット

撮影:田渕睦深
バスタイムを上手に活用すれば、健康の維持、増進に役立てることができます。しかも銭湯なら、健康効果はますますアップ。正しい入り方を知って、毎日元気に過ごしましょう。入浴の作用、そして銭湯ならではのメリットを医学博士で東京都市大学教授の早坂信哉さんに教えてもらいました。

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■入浴には、どんな作用がありますか?

入浴が体に及ぼす作用のうち、代表的なものは7つあるとされています。
まずは「温熱作用」。体が温まることで血管が広がり、血行が促進されます。次に「静水圧作用」。水圧が血行を促進し、むくみの解消にも役立ちます。「浮力作用」は、体にかかる重力を軽減して体をリラックスさせます。そして「清浄作用」は、肌表面の汚れを流すとともに、気分もリフレッシュ。「蒸気・香り作用」は、蒸気が口や鼻の粘膜を潤して免疫力の低下を防ぐとともに、香りが自律神経を整えます。「粘性・抵抗性作用」では、水の抵抗で生じる体への負荷を利用することにより、少ない運動でより高い運動効果を得ることができます。そして「開放・密室効果」。裸になることで開放感が得られるうえ、家の浴室では一人になれるリラックス感が、銭湯などではさらなる開放的な気分が味わえます。
このように、入浴は体に健康的な作用を及ぼしますが、その多くはシャワーを浴びるだけでは得られません。お湯につかってこそ、十分にメリットを享受することができるのです。暑い日や疲れている日は、ついおっくうになってシャワーで入浴を済ませがちという人も多いですが、それではもったいないということがよくわかります。

■「銭湯ならでは」のメリットはありますか?

銭湯の最大の特徴は、やはり、内風呂に比べてずっと大きいこと。このことが、さまざまなメリットにつながっています。
まず、浴槽が大きい分お湯の量が豊富なので、お湯が冷めにくく体の芯までしっかり温まります。また、浴槽が深いため体にかかる水圧も大きく、血行の促進やむくみ解消にもますます効果的です。
さらに、高い天井や広々とした空間が気分を開放的にして、副交感神経のスイッチが入りやすくなり、心身ともにリラックスできます。桶の響く音や適度なざわめきといった心地いい音も、銭湯ならではのもの。
家と違うお風呂に入ることには、一種の「転地効果」ともいえるリフレッシュ効果もあります。遠くの温泉まで行かなくても、小旅行気分が味わえるのです。
そして、自然と周りの人とのコミュニケーションが生まれるのも、銭湯のよさ。特に一人暮らしの高齢者の場合、本人の気持ちが明るくなるだけでなく、地域の人たちによる見守りにもつながります。
■『NHK趣味どきっ!銭湯 ボクが見つけた至福の空間』より

NHKテキストVIEW

銭湯: ボクが見つけた至福の空間 (NHK趣味どきっ!)
『銭湯: ボクが見つけた至福の空間 (NHK趣味どきっ!)』
近藤 和幸,今井 健太郎,今田 耕太郎,早坂 信哉,鄭 忠和,上岡 洋晴
NHK出版
1,210円(税込)
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