温泉をつくり人々の健康を守るオオクニヌシとスクナヒコナ

湯泉神社 撮影:森山雅智
縁結びの神様として知られるオオクニヌシは、神話「因幡(いなば)の白兎(しろうさぎ)」で、傷の悪化で苦しむウサギに的確なアドバイスをしたことからもわかるように病気やけが治療も得意。海の彼方からやってきたスクナヒコナとタッグを組んで、医療の神様となり、全国を旅してたくさんの事業を行いました。私たち人間が毎日を元気で暮らせるようにと、各地に温泉をつくり、さまざまな知恵を授けてくれたのです。そんなオオクニヌシとスクナヒコナを祀る神社は日本各地にありますが、今回は兵庫県神戸市にある湯泉神社(とうせんじんじゃ)を訪ねました。國學院大學研究開発推進機構日本文化研究所教授の平藤喜久子(ひらふじ・きくこ)さんに神社の由来と歴史をうかがいます。

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有馬の温泉街は六甲(ろっこう)山地の北側に位置し、標高350〜500mの山峡にあります。そのほぼ中央に鎮座する湯泉神社は、高台から温泉街を見守り続けています。神社の創建には、2柱のご祭神が大きく関わっています。
オオナムチ(オオクニヌシ・大黒様の別名)とスクナヒコナが全国を旅していたときのことです。病気治療に使う薬草を探しに行った際、傷ついた3羽のカラスが赤い水を浴びているのに出会いました。数日して、カラスの傷が癒えたのを見た2柱の神は、不思議に思って赤い水を調べてみると、効能が高い温泉だとわかり、これが有馬温泉の始まりと伝えられています。赤い水とは、温泉の成分に鉄分が含まれているためで、湯の色は褐色。今も有馬温泉には、高い保湿効果があるとされる褐色の濁り湯、「金泉(きんせん)」があります。
湯泉神社は、赤湯を発見した2柱の神が祀られ、拝殿には3羽のカラスが彫刻されています。
古い歴史を持つ有馬温泉ですが、承徳(じょうとく)年間(1097〜98)に水害によってお湯が出なくなったことがあり、およそ100年後に奈良の僧侶、仁西上人(にんさいしょうにん)によって復興されました。上人のもとに熊野権現の化身が現れ、「荒れ果てた有馬温泉を再興するように」とお告げがあったことから、湯泉神社ではクマノクスビ(アマテラスの髪飾りから生まれた5柱の神の1柱)も併せて祀られています。
■『NHK趣味どきっ! 幸せ運ぶ! ニッポン神社めぐり』より

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