タネと苗 ホームセンターや園芸店はどう管理しているの?

たくさんの苗が並ぶ園芸専門店の店頭。メーカーの苗はカラフルなラベルつき。その会社への信頼や味のよさなどから、価格は高めでも人気がある。撮影;岡部留美
タネや苗は、どんな道をたどって私たちのもとへ届くのでしょう。小売店、種苗会社、そして苗作りやタネとりをしている農家へとさかのぼり、3号連続で話を聞きます。まずは、最も身近な小売店へ!

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■売る品種は、見て味わって決める

ホームセンターや園芸店に並ぶ元気な苗。この苗には大きく二つの種類があることをご存じですか?
「一つは種苗会社が作っている苗です。このタイプの苗は、店頭に並ぶ前年には小売店側が選んでいるんですよ。例えば夏野菜の苗は、前年の4~8月には、『来年は、この品種を商品にしよう』と決めています。種苗会社ごとに開催される展示会へ出かけ、そこで新しい品種などを見せてもらって選ぶんです」。そう教えてくれたのは、全国でホームセンターを展開するDCMホールディングスの杉浦寿和さんです。
「当社では、実際に種苗会社の農場を訪れて、その品種が育っている様子を見学し、青果物もできるかぎり試食させてもらっています。味を確認しないと、自信をもってお客様におすすめすることができませんから。展示会や見学会の際には、数年後に世に出る新品種の情報も聞いてくるんですよ」(杉浦さん)

■契約農家に作ってもらう苗も

もう一つの苗は、ホームセンターや園芸店が、それぞれの契約している農家に作ってもらっているタイプです。1ポット100円以下で売られるものも多く、価格帯が低めのため「ボトム(底)苗」とも呼ばれます。野菜の種類や苗の数、入荷のスケジュールなども事前に決められ、計画的に生産されています。
「地域ごとに契約している農家さんがいて、近場で作った苗をそのエリアの店舗に出荷してもらっています。北海道で作った苗を四国で売ったりはしません。苗は生き物ですから、お客様に新鮮でよい苗をお届けするために、地域ごとに仕入れ先があるんです」(杉浦さん)。地域によって土や気候が違うので、栽培する地域に近いエリアで育苗した苗を植えてもらうほうが、生育に向いているだろうとも考えているそうです。

■タネは委託販売か買い取りか

さて、次はタネの話。ホームセンターなどの売り場に並ぶタネは、どのように選ばれているのでしょう。
「当社では、種苗会社さんからの提案も参考に雑誌なども見ながら、どんな野菜が人気かを頭に置いて商品を選びます。棚のどこに何のタネを並べるかというレイアウトは本部で決め、各店舗に指示。春夏野菜から秋冬野菜へのタネの切り替えは6月末からで、7月半ばには日本中の店舗のタネ売り場が秋冬野菜に変わります」(杉浦さん)
売れ残ったタネは種苗会社に返品するホームセンターが多いそうですが、本部と店舗、そして種苗会社とも売り上げのデータをやりとりしながら、なるべく返さずにすむように供給量をコントロールするのだとか。返品されたタネは種苗会社で適切に処分しているそうです。
※つづきはテキストでお楽しみください。
■『NHK趣味の園芸 やさいの時間』短期集中連載「タネと苗のはなし」2019年10・11月号より

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