検討室のやり取りにフォーカスした観戦記 第31回テレビ囲碁アジア選手権 日本大会

検討室を盛り上げた趙治勲名誉名人(左)と一力遼八段(右)。 撮影:小松士郎
日中韓のテレビ早碁棋戦の優勝、準優勝者が代表で集まる31回テレビ囲碁アジア選手権 日本大会。日本開催は3大会ぶり。前年優勝のキム・ジソク九段を加えた7名で早碁世界一を競った(シン・ジンソ九段は繰り上げ出場)。シン・ミンジュン九段(黒・韓国)と井山裕太九段(白・日本)の対局を、検討室のコメントを中心に紹介する。

* * *

シン・ミンジュン九段は20歳。井山とは初対局だ。検討メンバーは対局が終わったばかりの一力遼八段、立合人の趙治勲名誉名人、解説の林漢傑八段(囲碁AIも操作)を中心に、記録係の大西研也三段、読み上げ係の茂呂有紗初段、張豊猷八段。

黒11(1譜・以下略) 趙「(打つ前の)予想は黒Aあたりかな」
一力「黒11に打ちたいです」
――実戦は黒11へ打つ。
趙「(一力を見て)おおー、さすがだね」
白12 一力「AIが打ってましたね」
白16 一力「ここまでの白の構えをあまり見たことがなく、独特な感じです。三々関連の布石にすると、中韓は研究しているから少し外そうとしているのかな」
白22 一力「(打つ前)井山さんは白22にノビますね。私も井山さんと2回打ってます」
趙「白22で23とハネると、黒Bへハネられて黒に調子を与えるね」
――白22は一力の予想どおりにノビ。
黒29 林「AIが黒Cを勧めています」
――ここが手厚い一着のようで、その後も幾度となくAIが勧めていた。
白30 一力「井山さんの立ち上がりは悪くなさそう」
黒31〜35 趙「黒は美しい感じがしない」
白36 一力「ここまで白は腹が立たない。白の眼形が厚いから」
白40 一力「自然な一手ですね」
白44 趙「(打つ前)白42と打った人は、白44とケイマするでしょう」
――井山は趙の予想どおりに白44へ。
白46 一力「右下にモタれて、遠くから左辺黒五子をにらんでますね」
白50 一力「奥ゆかしいですね」
趙「芸を感じる」
――左下の眼形の問題と、白86の味をじっくりと見ているようだ。
白70 趙「白Dから出切れば、53の黒一子を取れるけど、白70は取るよりも美しいね」
一力「黒一子を取ると、左辺から中央の白が薄くなりますから、こちらのほうが眼形は厚いですね」
白76 林「AIは白Dからの出切りを示しています」
――局後すぐの検討でも、この部分は長く検討していた。
白78  一力「現在の形勢はいい勝負」
(局後) 井山「そんなに悪い気はしなかったけど」
――黒81 黒の強手が飛び出す。
黒87 林「AIが下辺を受けずに、黒93、白87、黒101の変化を示しています。これで白が悪いようです」
趙「そうだね、白が悪そうだ。気付かない」
(局後) 白96〜黒103 井山「このあたりはよけいだったかな」
――36の白一子を先手で助けて黒地を少し減らしたが、中央の白が少し薄くなった。
※後半はテキストに掲載しています。
■『NHK囲碁講座』2019年9月号より

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