怒りの感情を脳科学的に分析 キレる人に振り回されない上手な対処法とは?

キレる!: 脳科学から見た「メカニズム」「対処法」「活用術」 (小学館新書)
『キレる!: 脳科学から見た「メカニズム」「対処法」「活用術」 (小学館新書)』
信子, 中野
小学館
858円(税込)
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 悪質なあおり運転、児童虐待、モンスターペアレントなど、ここ最近、怒りを抑えきれずに社会的な事件につながるケースが多発しています。こうした"キレる人"に遭遇したとき、私たちはどのように対処するのがよいのでしょうか。また、自分自身がキレやすい性格で、そうした自分とどう付き合えばよいか悩んでいる人も多いかもしれません。

 いっぽうで、例えば人気芸人など、怒って見せながらも相手を不快にさせず、むしろ好感さえ抱かせるような上手なキレ方をする人たちもいます。そのポイントはどこにあるのでしょうか。

 こうした"怒り"という感情について科学的に分析しながら、具体的な対処法、活用法を教えてくれるのが、今回ご紹介する『キレる!』です。著者は脳科学者、医学博士、認知科学者としてテレビコメンテーターとしても活躍する中野信子さん。本書は、対人関係において自分を守る「盾」となり「強み」にもなるような「キレるスキル」に光を当てた一冊になっています。

 なぜ人は"キレる"のか、中野さんの専門分野である脳科学の立場から解説しているのが第二章。たとえば老人の攻撃性や頑固さは、理性を司る「前頭葉」が老化によって委縮することが原因であったり、子どもや夫(妻)など家族を束縛しコントロールしたがる人は、"愛情ホルモン"とも呼ばれる脳内物質オキシトシンが増えることで、"かわいさ余って憎さ百倍"とばかりに憎しみや妬みの感情も強まってしまうせいであったり。このように人が"キレる"仕組みは科学的に説明することができ、そのメカニズムを理解することで、「自分のキレる行為をコントロールできるようになったり、さらに、なぜ相手がキレるのか、タイミングや対処法が見えてきたりする」と中野さんは言います。

 そして、第三章では"キレる"人に対する対処法を、第四章ではキレやすい自分との付き合い方をケース別に提案。たとえば「支配的で、立場を利用しパワハラをする会社の上司」への対処としては、とにかく「初動」が大事なのだそう。関係が深まってしまってから突然訴えても、相手はなかなか納得してくれないため、最初の理不尽に"怒り"を覚えたら、正しくキレて、はっきりと言い返すというのが効果的なのだとか。ほかにも、「普段はおとなしいのに、突然攻撃的になる人」「執拗なまでの『あおり運転』『ロードレイジ』」「疑い深く、キレやすい『暴走老人』」など私たちが日常生活でいつ遭遇してもおかしくない"キレる人"が挙げられており、ためになります。

 「我慢は美徳」「努力したら報われる」といった考え方は日本には根強いですが、他人の努力などなんとも感じない毒々しい人がたくさんいるというのもまた事実。キレられっぱなしで都合のよい人にならないためにも、私たちが「キレるスキル」を身に着けることは必須といえるかもしれません。そして、上手に言い返すためには、豊富な語彙力もとても重要になってきます。さまざまなケースやパターンを学ぶための問答集としても、本書はきっと皆さんの役に立ってくれることと思います。

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