渡辺明棋王vs.三枚堂達也六段 戦国時代を駆ける者たち

左/三枚堂達也六段、右/渡辺 明棋王 撮影:河井邦彦
第68回 NHK杯戦 2回戦 第8局は三枚堂達也(さんまいどう・たつや)六段と、渡辺明(わたなべ・あきら)棋王の対局となった。宮本橘さんの観戦記から、序盤の展開を紹介する。


* * *


■戦国時代の先駆者

将棋界はいまタイトル保持者が次々に誕生し、戦国時代に突入したと言われている。その先駆けとなったのが渡辺で、現在40代後半のトップ棋士たちがタイトルを独占していた状況に風穴を空けて、以来、若手の旗手として先頭に立ち続けた。
その渡辺も今年34歳を迎え、若手を牽引(けんいん)する立場から、新しい時代の波を受け止める立場に変わりつつあるという状況だ。
将棋は角換わり模様の出だし(1図) から、渡辺が角道を開けずに△6二銀〜△4二銀(2図)と構える工夫を見せた。


■前例は防衛戦

△4二銀とする作戦は1局だけ前例がある。今年の3月に行われた渡辺の棋王防衛戦の最終局で、挑戦者の永瀬拓矢七段が用いた作戦だ。結果は先手番の渡辺が勝って防衛を果たしたのだが、相手の作戦に見るべきところがあると感じて研究を深めていたのかもしれない。
帰り際の渡辺にそのことを少し聞いてみたが「いやあ(作戦としては)適当ですよ」と軽くかわされてしまった。
△4一玉までは前例と同じ進行。続く三枚堂の▲4六歩(3図)で未知の局面に入った。

相手の研究を外す
今年25歳になりプロデビューから5年目を迎えた三枚堂。
昨年、初の棋戦優勝を果たして、さらなる飛躍が期待されている若手の一人だ。作戦家としても知られており、最新戦法の研究で一目置かれる存在である。
本局は3図の▲4六歩で前例を離れたが、三枚堂は「(前例の)▲2七銀は相手が深く研究していると思ったので変化しましたが、すぐに仕掛けられて自信がありませんでした」と語った。ただ、そうは言いながらも、実戦的にはいい勝負と思っているようだった。

※投了までの棋譜と観戦記はテキストに掲載しています。
※肩書はテキスト掲載当時のものです。
■『NHK将棋講座』2018年12月号より

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