ヒュッゲな暮らしに学ぶ、おひさまとのつきあい方

掃き出し窓を腰窓にリノベーションし、ディスプレイスペースもしっかり確保。撮影:田渕睦深
「ヒュッゲ(HYGGE)」とは、デンマーク人が大切にしている、時間の過ごし方や心の持ち方を表す言葉。特別なことをするのではなく、日常の中にある何気ないことに幸せを感じること。
そんなヒュッゲのある暮らしを、日本で実践しているイェンス・イェンセンさんのご自宅を、講師のアートディレクター水谷孝次(みずたに・こうじ)さんが訪問。築40年の日本家屋を、約5年かけてリノベーションしたという空間は、自然が近くぬくもりがある。水谷さんも思わず「ヒュッゲだね〜」とつぶやいていた

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■窓の役割を生かしてヒュッゲな空間をつくる

デンマーク人にとってヒュッゲは、暮らしを豊かにする大切な時間。だからこそ、基盤となる自宅は特別で、心地よく過ごせるように、自分たちで工夫しながらDIYしていくのが一般的だという。なかでもヒュッゲな空間づくりに欠かせないのが窓。イェンセン家にはリビングの大きな窓をはじめ、キッチンや書斎、洗面所、プレイルームにも窓があり、外に広がる自然がインテリアの一部のように溶け込んでいる。
「窓には役割が3つあって、1つ目は光を取り込むこと。冬のデンマークは日照時間が短いでしょ? だから光を取り込める窓は大切な存在です。2つ目は空気を入れ替えること。これは日本も共通だと思いますが、よどんだ空気はヒュッゲじゃないからね。そして3つ目は、外と中をつなぐこと。景色を眺めるのはもちろん、外から中が、中から外が見えることが大事なんです」と、イェンセンさん。
改めて窓の役割を教えてもらうと、イェンセン家にカーテンがないのも納得。また、太陽の光を、そして窓からの景色を生活に取り入れるために、窓のガラスは曇りガラスではなく、クリアなもので。これも基本だという。そして、ぬくもりを損なわないように、窓枠が木であることも大切なポイント。窓一つにもいろいろなこだわりがつまっている。

■おひさまに寄り添うヒュッゲな空間づくり

デンマークの秋から冬は、日照時間がひときわ短く、日ざしも日本よりずっと弱いため、小さな窓では部屋の採光には頼りない。そこで、デンマークでは間取りを工夫したり、外のスペースを上手に利用するなど、太陽を生活に取り入れる工夫が、家づくりにも生かされている。
「日本の住宅は小さく仕切られているので、日の当たらない部屋ができてしまうでしょ? この家のリビングも元は3つに仕切られていたから、壁を取り払ってリノベーションしました。空間を一つにしたことで、自然光が程よく行き届くヒュッゲなリビングになりました」
もう一つイェンセンさんが教えてくれたのは庭のお話。デンマークでは庭をアウトドアリビングと呼び、一つの空間として捉える文化があるという。「庭は眺めるものではなく、リビングと同じ生活空間であるという考え方です。だから、庭で食事をしたり、子どもと遊んだり、たき火をしたり、生活の場として利用します」
庭がなければ、ベランダやテラス、近くの公園を利用する手もあり。身近に自然の場所を見つけておくと、太陽との距離がぐっと近くなる。
■『NHK趣味どきっ! おひさまライフ』より

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