寺山怜五段が指南する「根拠を巡る攻防戦」

『NHK囲碁講座』の別冊付録「寺山怜の自由に打つためのポイント講座」では、寺山怜(てらやま・れい)五段の楽しいコラムと三択形式の問題&解答をお届けしています。10月号のテーマは「根拠を巡る攻防戦」。状況によって石の強弱は変わります。自分の不安定な石をしっかり補強したり、相手の石の根拠を奪ったりと、ポイントを押さえて主導権を握るための打ち方をお教えします。

* * *

「棋士は皆さん、仲がいいのですか?」こんなことを聞かれたことがあります。囲碁ファンの皆さんにはどう映っているのでしょうか。
棋士は自分以外みんなライバルみたいなものです。手合で当たったら勝つことが第一目標になるわけですから。とはいえ、仲が悪いかと言うとそうでもない(笑)。ご安心ください。
以前もお話ししましたが、手合のあとはみんなで飲みに行ったりします。そうそう、一緒に旅行したこともあります。何年前だったか、そんなに昔ではありません。鈴木伸二七段の実家にですね、お邪魔しました。北海道です!
9月でした。東京では残暑に苦しめられているころ、北海道ではもう紅葉が始まっていました。朝晩は寒い感じもあったほどです。
食事はごちそうばかり。正直、帰りたくなくなりました。最も感激したのは、鈴木くんのご両親が道内を案内してくれたこと。洞爺湖、支笏湖、いろいろなところに連れて行っていただきました。ご覧になっているでしょうか。あのときは本当にお世話になりました。機会があれば、ぜひまたよろしくお願いします!
現在狙っているのは田尻悠人四段。彼は石川県出身です。石川もいいところだそうですね。田尻くん、いかがでしょうか?
今月も根拠について詳しく触れてみました。根拠がしっかりしていれば強い石、根拠がはっきりしなければ弱い石。文字にすると簡単ですが、盤上では周囲の状況によってその度合いは変化していきます。では、始めましょう!

■第1題 黒番(1〜18)

まずは肩慣らし(笑)。いろいろな考え方があるところです。ただし、三つの候補のうち、一つだけ「マイナス」の着手があります。


■正解 A

オススメ!  弱い石をキープ
1図 弱い石を作らないことの大切さは、これまでの半年間でお話ししてきたとおり。これを応用すれば、敵に「弱い石」ができるのは大歓迎と分かります(笑)。ぼくは黒1にツギたい。これで自身は安定し、白は根拠の不安がクローズアップ。主導権を取りにいくのです。


■不正解 C

 
絶対避けたい みずから窮地に…
11図 黒1と左辺をワリ打つのは、悲しいワカレにつながります。白はここでも2、4とカミ取ってくるでしょう。この瞬間、白に弱い石はなくなっていますよね。では、黒はどうか。上辺の一団が弱体化するのはしかたがない。見逃せないのは黒1の存在です。

■『NHK囲碁講座』2017年10月号より

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