子供を持たない選択ってどう? 共働き夫婦の著者が心のうちを明かしたエッセイ

産む気もないのに生理かよ!
『産む気もないのに生理かよ!』
月岡ツキ
飛鳥新社
1,760円(税込)
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 男性と女性で決定的に違うのは、女性が「妊娠・出産する性である」という点です。「子供を持つか持たないか」は女性にとって大きな選択の一つであり、だからこそ悩みや葛藤を感じる人も多いのではないかと思います。

 とはいえ、子供を産まない人が増えた現代でも「子供を持つことに躊躇している人の話や、子供を持たないことにした夫婦の話というのは、思いのほか世の中に少ない」(同書より)というのは、ポッドキャストの人気配信者でコラムニストの月岡ツキさん。月岡さんはDINKs(子供を意識的に作らない夫婦)ですが、「住宅や車といった商品や、地域で催されるイベントなどもほとんどが『子供がいる家族』向けに設定されていて、子なしの夫婦はことあるごとに『お前らは社会の例外』という空気を感じる」(同書より)といいます。このように自身を主流派と感じない人も多い「母にならない選択」という問題について、月岡さんが心のうちを赤裸々にさらけ出したエッセイが『産む気もないのに生理かよ!』です。

 月岡さんが「子供を産みたいと思えない」理由は多岐にわたります。リストにしてみれば、その数およそ40個。「そもそも他人の人生を勝手にはじめていいのか? と思ってしまう」「つわり・出産自体が身体的につらそう」といった出産そのものに対する疑問・不安のほか、「体力・気力ともに育児に耐えられる自信がない」「自分が『毒親』にならない保証がない」といった子育てへの不安、「仕事や趣味をセーブしなければいけないのが嫌」「『ママ〇〇』『〇〇ちゃんママ』の枠にはめられるのが嫌」といった母になることによるアイデンティティ喪失の不安、「子供に障がいや病気があっても守ってくれる社会ではない」といった社会への不安、さらには「夫との二人暮らしが楽しすぎる」など子供を産まないことで叶えたい生活......。子供を欲しくないと思っている人は共感の嵐かもしれませんし、子供がいる人にも理解できる部分があるのではないでしょうか。

 「子供を持たない」という選択についてはまだ少しゆらぎがあり、だからこそ葛藤を抱えている月岡さんですが、同書を通して感じるのは、どちらを選ぶにせよ「社会や周りの意見は気にせず、子供を産むか産まないかは自分が決めてよいのだ」という思い。「『こっち』側にいようと『そっち』側にいようと、自分の人生に納得感を見出せるかどうかに、子どもの有無は関係ない。自分の生き様次第なのだと信じたい」(同書より)と綴っています。

 妊娠・出産については、親しい間柄でも踏み込んで話すのが難しい、デリケートな話題です。そんな中で同書は、子供を持たないことを選ぶ女性の本音や実情をこれ以上ないほど詳しく知ることができる一冊と言えるかもしれません。少子化は社会にとって大きな問題ではありますが、それとは別に、どんな人も個人の選択が尊重され、快適に生きられる社会になることを期待したいものです。

[文・鷺ノ宮やよい]

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