「一生、取り立てる」 不良債権の取り立てに奮闘するトッカイ(特別回収部)の攻防

トッカイ バブルの怪人を追いつめた男たち
『トッカイ バブルの怪人を追いつめた男たち』
清武 英利
講談社
1,836円(税込)
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 今の若い世代は知らない人も多いであろう「住宅金融専門会社」、略して「住専」。1970年代に銀行などが設立した、個人向け住宅ローンをあつかったノンバンクのことです。当時、銀行は企業向け融資を優先しており、個人向けには熱心ではなかったため、大蔵省主導のもと銀行などの金融機関が共同出資してこうした専門会社が設立されることになったという背景があります。

しかしその後、バブル経済の崩壊により住専は巨額の不良債権を抱えることに。住専8社のうち7社が経営破綻し、6850億円もの公的資金が投入されることとなったのですが、これは世論の強烈な反発を招き、その是非をめぐっては国会を巻き込んでの政治問題へと発展しました。

 本書は、この不良債権取り立てに奮闘する国策会社(=整理回収機構)で働く男たちの熱い戦いを描いた一冊です。「トッカイ(特別回収部)」と呼ばれた彼らは経営破綻した住専や銀行からさまざまな理由で選ばれ、借り手の側から今度は取り立てる側へと回り、大口で悪質な反社会的債権者を担当したといいます。バブル経済に踊った怪商に借金王、ヤクザ......こうした一筋縄では行かない相手との攻防や彼らをジワジワと追い詰めていく様子が、手に汗握る一大ドキュメントとして描かれています。

 そう、本書はけっしてフィクションではなく、著者の清武英利氏が3年半もの間、関係者のところへ通って丹念に取材し書き上げたノンフィクション。清武氏は整理回収機構の元役員から「彼らの不良債権回収は将棋に似ている」という話を聞き、トッカイの人々を描きたいと強く願ったのだといいます。トッカイにいた多くは、勤めていた住専や金融機関がつぶれ、そこから大蔵官僚と政治家がしつらえた取り立ての盤上に将棋の駒のように打ち込まれた者たち。離脱が許されるわけではない、しかし展望を考えることもできない大混乱の現場の中で、「彼らが不安を抱えながらどう生きたか、どこへ去っていったのか、追ってみたいと私は思った」と清武氏はあとがきで書いています。

 整理回収機構の前身となる住宅金融債権管理機構が設立されたのは1996年で、初代社長に就任したのは「平成の鬼平」と呼ばれた中坊公平元日弁連会長でしたが、「一生、取り立てる」という彼の遺訓は今もまだ生き続けているといいます。当時2000人超がいた組織は現在300数十人へと減ってはいるものの、今も回収機構は存在し、悪質債務者から取り立てをおこなっているそう。平成から令和へと移り、住管機構から数えると間もなく20年という節目を迎えようとする今でも、本書に登場する不動産会社元社長・西山正彦氏への回収は現在進行形で進められているというから驚かされます。

 著者の清武氏は元読売新聞社の社会部記者であり、読売巨人軍の球団代表や編成本部長を務めたこともある人物。『石つぶて 警視庁 二課刑事の残したもの』や『しんがり 山一證券 最後の12人』などの著書でも知られる名うての作家の作品には、皆さんのページをめくる手もきっと止まらなくなることでしょう。

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