浮気や不倫じゃない「複数恋愛」=ポリアモリーって何?

わたし、恋人が2人います。~ポリアモリー(複数愛)という生き方~
『わたし、恋人が2人います。~ポリアモリー(複数愛)という生き方~』
きのコ
WAVE出版
1,650円(税込)
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 「性の多様化」について話題にあがることが多くなってきた昨今、LGBTとともに注目を集めているのがポリアモリーではないでしょうか。「ポリアモリー」とは複数の人と同時に、それぞれが合意のうえで性愛関係を築くライフスタイルのことです。

 初めて聞いた人は「それは浮気や不倫じゃないの?」「倫理的に罪悪感はないの?」などと思うかもしれません。けれど、けっして浮気でも不倫でも二股でもなく「誠実で正直な複数恋愛」を指すのがポリアモリーであり、22世紀に向けた新しい恋愛スタイルとして知られ始めています。

 本書の著者であるきのコさんもポリアモリーのひとりで、男性Aさんと同棲しながら別の恋人ともつき合っているという30代の女性です。そして、2016年から人気ウェブサイト「cakes」で連載している「わたし、恋人が2人います」を書籍化したのが本書。

 「周囲にはポリアモリーと伝えている?」「ポリアモリーの恋人同士で嫉妬し合ったりしないの?」「セックス事情はどうなの?」「結婚や子どもについてはどう考えている?」などといったモノガミー(お付き合いは一対一でするものという考え方にもとづいたライフスタイル)の人であれば当然わき出るであろう疑問について、ポリアモリーの立場から自身の経験をふくめて解説しています。

 正直、本書を読んでも「LGBTについては受け入れられてもポリアモリーについては理解できない」と感じる人は多いかもしれません。一夫多妻制であり、特定のパートナーと結婚して子どもを持ち家庭を作ることがよしとされてきた日本ではとくに。きのコさんも自分がポリアモリーであると知り、それを受け入れるまでには大きな葛藤があったといいます。

 大学に入学して初となる恋人ができたものの、数か月後には他にも好きな人ができてしまったというきのコさん。「初めて彼氏ができてうれしいし、彼氏のことがとても大切なのに、どうして他の人も好きになってしまうんだろう。自分は何か精神的におかしいのでは......」とひどく悩んだそう。しかしネットで調べる中で「ポリアモリー」という言葉を見つけ、「そうか、わたしって、ポリアモリーだったんだ!」と暗闇の中から光が差したような感覚を感じたといいます。

 ポリアモリーについて100%理解して受け入れることは最初はむずかしいかもしれません。「最初は」ではなく「永遠に」という人もいるでしょう。けれど、「こういう考え方やライフスタイルの人もいる」と受け入れることは必要かもしれません。

 あとがきで「ポリアモリーに限らず、セクシャリティであれ、宗教や人種や、障害や病気であれ、『オープンにしてもいいし、しなくてもいい』という社会が誰にとっても心地よいものになるのではないかと、私は考えています」ときのコさんは書いていますが、それにはまず「世の中には自分とはちがういろいろな人がいることを認める」ところから始まると思うからです。

 まずはその一歩として、本書はポリアモリーを知るための一冊として参考になることでしょう。ポリアモリーが今後、新しい恋愛スタイルとして日本でどのように受け入れられていくのかもふくめ、たいへん興味深いものがありますね。

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