生活費出さず、妻に借金する男...それでも"別れられない"夫婦の真実

おめでたい女
『おめでたい女』
鈴木 マキコ
小学館
1,620円(税込)
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 2017年の年間ベストセラー総合1位に輝いたのは、94歳の直木賞作家・佐藤愛子さんが書いたエッセイ『九十歳。何がめでたい』。105万部を突破し、ミリオンセラーとなりましたが、この愛子先生が"めでたい"つながりで帯にコメントを寄せる本が、『おめでたい女』(鈴木マキコ著)です。

 会社員でありながら夏石鈴子の名で、『バイブを買いに』などの作品を書いてきた作家が、映画監督である元夫がつけたペンネームを捨て、彼との結婚生活をつづったのが本作。生活費はもとより、映画製作の費用まで「年収以上の金額」出してきた著者はあるとき、マンションを買い替え、生活を立て直そうとします。そして、引越しの支払いや買い物をするからという夫に197万円の貯金のある通帳を渡してしまいます。夫の人間ドックや医療保険、そして息子の高校進学などに使うはずのものでしたが、それが約10日間でたった923円に。夫が毎日20万円ずつ下ろし、泡となって消えたのでした。

 これを契機に著者は離婚を決意。男と女、金と家族、生活と人生について、自分の育った封建的な家庭を含め、つらい過去を振り返りつつ、現在進行形の私小説として物語が進みます。

 本書には強烈なセリフが随所に登場します。たとえば、妻が今まで貸した金を全部返してほしいと言ったときに夫が返した言葉。「あのさ、何を今更言っているんだよ。お前が好き好んで出した金だろうが。あんまり俺を、がっかりさせないでくれ。金は出せって言われて、出した奴が負けなんだよ」。

 息子が小学生に入ってすぐくらいのときに著者に向かって言った言葉。「なんだよ、ママなんて、パパの奴隷じゃないか」。

 あんまりです。著者がかわいそうで仕方がない。ただ、読み進めるうちに、ひどい仕打ちを繰り返してきた夫との間にも確かな絆があり、かけがえのない時間があったことも読者は感じます。男と女の関係は非常に不思議で、当人同士にしかわからない。"別れられない"女の真実がここにあるのかもしれません。

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