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杉山すぴ豊の、アメキャラ映画パラダイス

第77回 進撃の最恐ピエロ、再び! ハリウッド版『進撃の巨人』への期待も膨らむ 『IT/イット THE END "それ"が見えたら、終わり。』

『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』 11月1日(金)より公開!

まずこの記事のタイトルから説明させてください。
11月1日から公開されるホラー映画『IT/イット THE END "それ"が見えたら、終わり。』の監督アンディ・ムスキエティはハリウッド版『進撃の巨人』の監督候補として名前があがっている方なのです。結論から言うとこの監督なら巨人と少年たちの大バトルをケレン味たっぷりに映像化してくれるでしょう。

本作は2017年に大ヒットした『IT/イット"それ"が見えたら、終わり。』(以下、前作)の続編。しかしながらホラー映画によくある、ヒットしたからそのキャラを使ってシリーズ化しました、、ではなく元々のこの映画は二部作想定で作られており、前作と本作は前編・後編の関係です。とはいえ前作を観てなくても楽しめる独立した作品にもなっています。日本でもファンの多いスティーヴン・キングの小説を原作。本作への期待は大きく、今年のサンディエゴ・コミコンではこの映画のためにサンディエゴとSCARY(怖いという意味)をかけた"スケアディエゴ"という特別なイベントが開催!あまりの人気で、僕は会場に入れませんでしたから(笑)。

とにかくファン待望の作品であり、今年はアメコミ映画ファンにとっては『アベンジャーズ:エンドゲーム』、ホラー映画ファンにとっては『IT/イット THE END "それ"が見えたら、終わり。』といっても過言ではないでしょう。
結論から言うと、その期待に十分応えた見応えある作品です。

アメリカ、メイン州の田舎町デリー(架空の町)に昔からすみつき27年ごとに凶行をくりかえす邪悪な存在、それがIT/イットです。1988年に現れた時も子どもたちを襲いましたが、7人の子どもたちによって撃退されます。そして子どもたちは誓います。もしまたIT/イットが現れたら、また集まり戦おうと。そして27年がたち、2016年、再びIT/イットは現れます。大人になった子どもたちは再び立ち向かうのですが・・。

そう前作は1988年の戦い、本作は2016年の戦いを描きます。この7人の子どもたちは様々な悩みやトラウマ等を抱えており、要は町の中でもみそっかす扱いされています。彼らは自らを自虐的にルーザーズ・クラブ(負け犬クラブ)と言っています。そしてIT/イットは子どもに近づきやすく、また怖がらせる姿としてピエロの形で現れる、という設定。これさえ押さえておけば本作から観ても大丈夫です。
本作は3時間近くもあり、最も長い上映時間のホラー映画かもしれませんが、その理由も納得なのです。
本来であれば大人になったルーザーズ・クラブとIT/イットの対決を描けばいいのですが、やはり前作が大ヒットした理由は子どもたちのドラマ部分が愛らしく、彼らの魅力が大きかったです。従って本作もその子どもたちのドラマ部分が予想以上にたっぷり描かれています。

そしてIT/イットの暴れっぷりが増量!ホラー映画史上最大の量の血ノリを使ったらしいです(笑)。そしてIT/イットは変幻自在=相手の怖いモノやトラウマに化けて現れるので様々なフォームで襲い掛かってきます。しかも今回はなぜか巨大!そうまさに『進撃の巨人』×『遊星からの物体X』みたい。最高のモンスター映画に仕上がっており、この監督の『進撃の巨人』が本当に楽しみになりました。

そもそもなぜこの邪悪な存在をIT/イット=それ、と言うのか。映画評論家の町山智浩さんが確か"鬼ごっこの鬼をIT/イットと呼ぶ"みたいな解説をされていた記憶がありますが、1950年代のSF、モンスター映画には"It came from outer space(それは外宇宙からやって来た)""It! The Terror from Beyond Space(恐怖の火星探検)""It Came from Beneath the Sea(水爆と深海の怪物)"等と怪物や正体不明の物を"それ=IT"と呼ぶものがあったようなので、そうしたモンスター映画へのオマージュからこのタイトルにしたという説もあるのです。原作小説だとルーザーズ・クラブの子どもたちのエピソードはまさに1950年代後半なので。だからあらゆるモンスター映画の一大ショウケースみたいになっているのです。

観たいものをちゃんとみせてくれるサービス精神、そして実はとってもエモーショナルなエピックに仕上がっていて、怖いけれどとても胸をうつ至福の3時間です。
IT/イットの正体はなにか?そしてIT/イットはルーザーズ・クラブにとってなんだったのか?は様々な解釈が成り立ちますが、そこの余韻もまた素晴らしいです。

なお前作の子役たちはさすがに成長してしまったそうなので、なんとデジタルで修正して"若返らせた"そうです。子役たちも素晴らしかったのですが本作の大人たちの役者も魅力的。キーとなる男女をジェームズ・マカヴォイとジェシカ・チャステインが演じています。この2人はいまブルーレイにてリリースされている『X-MEN:ダーク・フェニックス』でも共演。この『X-MEN:ダーク・フェニックス』は『アベンジャーズ/エンドゲーム』『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』のはざまにおちいり、今一つ話題になりませんでしたが、隠れた傑作!特にクライマックスの列車アクションは、これぞ!観たかったX-MENのアクション!なので見逃した方はこちらもこの機会に!

それにしても『ジョーカー』の次に『IT/イット THE END "それ"が見えたら、終わり。』とは!いまや映画館はピエロに席巻されています(笑)

(文/杉山すぴ豊)

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『IT/イット THE END "それ"が見えたら、終わり。』にて(左は筆者)

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杉山すぴ豊

アメキャラ系ライターの肩書きで、アメコミ・ヒーロー映画やSF、モンスター映画についての伝道活動を、雑誌、TV、WEB等で展開。 映画「アメイジング・スパイダーマン」「アベンジャーズ」の劇場パンフレットにも寄稿しています。映画「サラリーマンNEO劇場版(笑)」にCMクリエーター役でなぜか出演。 AOL等でもコラム展開中。
また人気と評判の(笑)ブログはこちら http://supi.wablog.com/

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