手に汗は握らないが荒唐無稽さに変な汗が出てくる『ジャングル・ツアーズ』
- 『ジャングル・ツアーズ(字幕版)』
- ノア・ルーク,マーク・ゴッドリーブ,リチャード・グリエコ,アリソン・ゴルスク,ウェイド・ウィリアムス,ジャック・ピアソン,ジェイミー・ペティット,ベンジャミン・バーナード
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ジャンルは冒険アクションなのだが展開が最初から最後まで意味不明で話の筋を理解しようとすれば混乱するばかり。別にパニック映画を観た覚えはないのに酷い困惑に包まれる。某配信サイトは本作を解説で「王道の展開が安心して楽しめる冒険アクション」と書いてあったがちょっとばかり王道の定義について問い詰めたいところ。視聴して手に汗は握らないが荒唐無稽さに変な汗が出てくる。
21世紀のCGとは思えないチープなモンスターが続々と登場する以外、本作にあらすじも何もないのだが、ブラジル奥地のジャングルで企業の森林伐採に参加した主人公の父親で考古学者のニコラスが密林の守護神クルピラの像を発見するところから物語は始まる。像の装飾品であるエメラルドに魅了されたニコラスらは音信不通となり、その知らせを聞いた主人公のアマンダと弟のスコットが探索のため船長とアマゾン川を進んでいく。ピラニア、毒カエル、人を飲み込む巨大なヘビなどに阻まれながらも父親を探し続けるが――という内容。
筋だけ見ると王道冒険アクションに思えなくもないが、唐突に出てきた盲目の男に助けられ「ジャングルの心臓を探せ」という意味深な言葉が出てきたと思ったらピラニアが現れて船長を殺害して船を破壊するなどご都合主義が過ぎる。ちなみに船が壊された主人公一行は陸に上がるなりワニに襲われる。一方、行方不明となったアマンダの父親はクルピラ像を調べていたが幻覚や幻聴に襲われていた。
再び場面変わってワニから逃れたアマンダたちだったが今度はアマゾン流域の先住民に襲われていた。とらえられて生贄とされそうになった次の瞬間、巨大なクモが先住民たちを襲う。当たり前に先住民を野蛮に描いているが、本作は21世紀の作品。舞台演出にしてもポリコレ的にどうなのか?と思わなくもない。
そんなこんなで父親らが失踪した現場に到着した主人公たちだが残されていた作業日誌を基に洞窟に入ると「ジャングルの心臓」と呼ばれる手のひらから余るほどの大きなエメラルド。次の瞬間には主人公たちが巨大なヘビに飲み込まれていた。襲われて危機を脱出するという演出を何度繰り返すのだろう。
その場を逃れた主人公たちはツタにとらわれたクルピラを発見する。どう見ても神というよりモンスターに見える。アマンダは鉈でエメラルドをたたき割りクルピラが復活。しかし主人公らが銃をぶっ放し返り討ちにして父親を見つけ出しエンドロールへ。最後に銃殺されたクルピラがアマゾンの森林を見つめているシーンで終わる。作品の流れを時系列に並べているはずなのに自分で自分が何を言っているか分からない。
辻褄が合わないとか、そういう話ではなく根本から物語として破綻している。86分の上映時間が拷問でしかなかった。不条理映画よりも酷い。
(文/畑中雄也)