もやもやレビュー

気持ちは言葉にして伝えよう『初恋~お父さん、チビがいなくなりました』

初恋〜お父さん、チビがいなくなりました
『初恋〜お父さん、チビがいなくなりました』
倍賞千恵子,藤竜也,市川実日子,星由里子,本調有香,小林聖太郎
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 倍賞千恵子さんと藤竜也さんの演技が秀逸で思わずググってしまいました(死語でしょうか)。

 三人の子の子育てを終えた専業主婦の有喜子(倍賞千恵子)と夫・勝(藤竜也)の暮らしが描かれます。
 無口な勝は家では何もせず、身の回りのことはすべて有喜子任せ。退職後も相談役として週に何日かは出勤しながら、仕事のない日も趣味の将棋を打ちに商店街へ出向く毎日。家で独りきりの有喜子の唯一の話し相手は飼い猫のチビでした。
 そんな中、チビが行方不明になります。
 餌を捨ててしまったり「死に場所を探しに行ったんだろう」と暴言を吐き、自分では見つけられず業者に頼んで必死に探そうとする有喜子の気持ちも分かろうともしない夫に、有喜子はショックを覚えます。さらに勝に浮気疑惑まで浮上して、本気で離婚しようというところまで追い詰められます。
 一方、追い詰められた勝は、お見合い結婚をした頃の昔話をし始めます。そして、有喜子は、勝の思いがけない想いを知ることになるのです。

 やはり気持ちは言葉にしたり、態度や行動に出さないと伝わらないのだと改めて思い知らされます。長年連れ添った夫婦なら言わなくてもわかることも往々にしてあると思いますが、やっぱり言わなければ伝わらないことってあるんですよね。それはいくつになっても、相手が大事な人であればあるほど大切なことだと思いました。

 余談ですが、作中、母・有喜子を心配した子供たちが実家に集合したその晩の夕食がすき焼きでした。久しぶりに家族が集まるとすき焼きを食べがちなのは、いつの時代も変わらないなとほっこりしました。

(文/森山梓)

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