もやもやレビュー

幻想世界を通して見る現実社会の"闇"『竜とそばかすの姫』

竜とそばかすの姫
『竜とそばかすの姫』
中村佳穂,成田凌,染谷将太,玉城ティナ,幾田りら,森山良子,清水ミチコ,坂本冬美,岩崎良美,中尾幸世,森川智之,宮野真守,津田健次郎,小山茉美,役所広司,佐藤健,細田守,細田守
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 『サマーウォーズ』や『未来のミライ』などで知られる細田守監督の長編アニメーション映画『竜とそばかすの姫』。超巨大インターネット空間の仮想世界が舞台ということもあり、『サマーウォーズ』の続編っぽくなるのでは?という声が公開前にたくさんネットに上がっていましたね。そんな本作、実は幻想世界を通して、現実社会の"闇"も描いているダークな一本。

 主人公は17歳の高校生のすず。幼い頃に母を目の前で亡くした彼女は、父と2人暮らしをしていますが、会話はほとんどない状態。しかも歌が好きだったすずは、母の死後、歌うことができなくなっていました。そんな彼女は、友人に誘われ、全世界で50億人以上のユーザーがいる仮想世界「U」に参加することに。「U」の中へ、ベルというアバターとして足を踏み入れたすずは、そこで歌を披露し、瞬く間に有名人となっていきます。しかし、そんな彼女の前に乱暴な"竜"という謎の存在が現れ......。

 主人公のアバターがベルで、竜という存在は「U」の中では"ビースト"と呼ばれており、さらには薔薇の花が登場したり閉ざされた城が登場したりと、ディズニー映画『美女と野獣』をモチーフにしたシーンが多いこの作品。ベルと竜の関係性こそ、『美女と野獣』のベルと野獣の関係に似ていますが、ストーリーが進むにつれ、現実社会の"闇"のようなものも浮かび上がってきます。注目すべきは"竜"の正体。予想外の正体に、きっと驚かされることでしょう。真実を知った頃には、その闇がとっても身近に感じられるはず。ちなみに"竜"の声は実力派俳優の佐藤健が演じており、キャラクターデザインは『アナと雪の女王』などの海外クリエイターが、さらにメイン楽曲は、King Gnu常田大希率いるミレニアム・パレードが担当したことでも話題となりました。そんな国内外で活躍する人々が集結し、作り上げられた本作は、圧倒的な映像美も必見。

(文/トキエス)

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