『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』で描かれる貧困の実態に、あらためてコロナ後のことを考えさせられる。
- 『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法(字幕版)』
- ウィレム・デフォー,ブルックリン・キンバリー・プリンス,ブリア・ヴィネイト,ヴァレリア・コット,クリストファー・リヴェラ,ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ,ショーン・ベイカー,クリス・バーゴッチ,ショーン・ベイカー,クリス・バーゴッチ,シン=チン・ツォウ
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2017年に公開されたドラマ映画『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』。海外に滞在していたときに、本作を映画マニアの人から強く勧めてもらいました。しかし、冒頭は小さな子どもたちが大人に悪質なイタズラをして罵声を浴びせるシーンばかり。そのため、一度みるのを中断してしまったのですが、再度時間をおいてチャレンジすると、心に刺さるシーンばかりで、新型コロナウイルスの事態が終息したあとのことも深く考えさせられました。
主人公のムーニーは、シングルマザーのヘイリーと2人でフロリダ州のウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートに近いモーテル「マジック・キャッスル」の一室に住んでいました。母とともに、その日暮らしの生活をしなくてはいけないムーニー。学校に行くこともなく、同じモーテルで過ごす子どもたちと、イタズラばかりを繰り返してきました。ある日、近くのモーテルに停まっていた車にツバをかけるゲームで仲間と遊んでいたムーニー。しかしその車のオーナーにひどく叱られ、自分たちで車を清掃することになります。そのとき、車のオーナーの家に住んでいる同じ年くらいの女の子ジャンシーと知り合い、一緒に遊ぶように。一方、ヘイリーは定職につけず、安い香水をブランド品として観光客に押し売りをするなどして生活し、なんとかモーテル代を工面していました。
本作は、物語の起承転結がアクション映画やコメディ映画のようにはっきりしているわけでもなく、ドキュメンタリーのような感覚で、ムーニーの生活に起こる出来事が淡々と描かれています。本作では2008年に発生したサブプライム住宅ローン危機の被害者となってしまった貧困層の実態を描いており、本来は短期滞在であるはずのモーテルに長期滞在しなければならない人々をリアルに映し出しています。さらに、近くにはお金に余裕がある人たちが遊びに来るディズニーがあり、その貧富の差に胸が痛くなります。
現在、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、アメリカの失業率は過去最大と言われています。きっと、本作のようにその日暮らしを強いられている人もいるのだなと実感するとともに、自分もこのような生活をしなくてはならないとなったら...と自分に当てはめてみることでより深く考えさせられます。
(文/トキエス)