もやもやレビュー

鑑賞後は、母に即座にラブコール『レディ・バード』

レディ・バード (字幕版)
『レディ・バード (字幕版)』
シアーシャ・ローナン,ローリー・メトカーフ,トレイシー・レッツ,ルーカス・ヘッジズ,ティモシー・シャラメ,グレタ・ガーウィグ,グレタ・ガーウィグ,スコット・ルーディン,イーライ・ブッシュ,エヴリン・オニール
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「反抗期、う〜ん、なかったかな」などという天使のような人、周りにいませんか。無類の優しさを持つ彼(もしくは彼女)。年齢はいまや30超え。反抗期がくるには少し遅すぎる。一体全体どう育てられれば、反抗期を通らずに生きてこられるのだろうと不思議に思いながらも、「そうか、反抗期とはまるで無縁、という人もいるのか」と無理やり自分に言い聞かせる。

というのも、多かれ少なかれ反抗期を経験してきた人のほうが多いのではないか。親が嫌いなわけじゃない。むしろ大好きで、大切で、心の奥底では言葉などなくても通じ合える貴重な仲だとすら感じている。でも、いまひとつ素直になれない。それが反抗期であり、思春期というものだと思う。

思い当たる節があれば、きっと母親(もしくは父親、もしくは両親)に対して「ごめん、ありがとう」の気持ちが込み上げ、やがて涙として頬をしたたる映画がある。その名も『レディ・バード』(2017年)。今や大注目の若手監督、グレタ・ガーウィグの初監督作品である。

主人公は本名で呼ばれることを嫌がり、家族や友達には「レディー・バードと呼んで」と言い放つ、突飛な女の子、クリスティーン(シアーシャ・ローナン)。本作では、生まれ育ったカリフォルニア・サクラメントの先に広がる大きな世界に目を輝かせる彼女が、高校最後の年に恋愛をしたり、イケてる子になろうとしたり、家族に甘え、騒ぎ立て、泣きついたりする様子が描かれている。

何度見返しても笑えるシーンがたっぷり詰まった本作だけれど、母親とのやりとりには胸がつまる。まるで自分の思春期を俯瞰して見ているようで、とても人ごとのようには思えない......という人もいるかもしれない(私です)。親と一緒に観るも、別々に観るもよし。会うや否や親子ぎゅっと抱き合うこと、間違いなし!

(文/鈴木未来)

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