もやもやレビュー

バカで浅はかな欲望はせめて慎もう『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』

植物図鑑 運命の恋、ひろいました [DVD]
『植物図鑑 運命の恋、ひろいました [DVD]』
松竹
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 男性の欲望(主にシモ方面)を直球ストレートで世間に放り出すのは、時勢的にも倫理的にもどうかなという風潮になってきている。欲望を絶つのは難しいので、せめて垂れ流しはやめようというのは道理である。無関係な第三者からすれば気持ち悪いだけだし。
 じゃあ女性の欲望の垂れ流しはアリなのかというと、全くそんなことはなく、男女問わず「バカで浅はかな欲望は閉鎖空間でコッソリ満たしてください」と思わせるのが本作の唯一の美点だろうか。

 仕事が上手くいかず、世のカップルを見て嘆く主人公のさやか(高畑充希)は自宅で酒を飲み酔っぱらって追加の酒を買いに行った帰り、道端で倒れている樹(岩田剛典)を拾い自宅に連れ帰り、半年限定で同棲生活を送る――というもの。
 設定によると、さやかは普通のOLとのことだが普通の人は道端に倒れている男性を部屋に連れ帰るだろうか。しかも樹は半年も名前の素性を教えない男である。性格良くて家事が完璧であっても、ミステリアスというよりヤバい匂いしかしない。
 惚れたの腫れたの何だかんだして、オチは樹が金持ちの息子で、幸せを予想させる終わり方。うーむ、樹ってば都合のよい妄想を詰め込んだお人形さんのようだ。キモオタの妄想を詰め込んだ2次元キャラクターも歪だが、3次元でその逆を見せられるのもなかなか辛い。

 社会で暮らしていれば、妄想に逃げ込みたい時もあることは大体の大人なら何となく同意することだろう。それ自体を咎めてしまうと現実世界は辛すぎる。ウンザリした時のために娯楽が存在している部分もある。従って本作も娯楽としては間違っていないのだろう。「男はペットではない」などと論じたところで、相互に馬鹿馬鹿しいだけだ。
ただ、露骨に性的でないからと言って欲望を劇場公開してよいかどうかは別だろう。欲望なんてものは第三者から見れば、ほとんどが見るに堪えない醜悪なものなのだから。せめてVシネマのように大っぴらにしない程度の慎ましさは欲しかった。

(文/畑中雄也)

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