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隠された少女の正体は...『テルマ』

『テルマ』 10月20日(土)よりYEBISU GARDEN SINEMA、ヒューマントラストシネマ有楽町 ほか全国順次公開

アカデミー賞、ゴールデングローブ賞外国語映画賞ノルウェー代表作品に選ばれたヨアキム・トリアー監督最新作がついに日本にやってきた。
監督は前作『母の残像』で世界に衝撃を与えたが、今作は前作以上に衝撃的だった。

田舎町で信仰深く抑圧的な両親の元で育った少女テルマ。なぜか幼少期の記憶がない。そんな少女が大学進学を機に両親の元を離れ、一人暮らしを始める。初めての恋が同性であることに戸惑うテルマ。自身の感情を恥じる反面惹かれ合っていく2人。少しずつ起こる体調の変化はテルマの隠された過去へとつながっていく。

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「テルマ」という言葉の意味は「真の意志」という古代ギリシャ語である。一人の人間として自己形成を行なう青春時代に誰もが直面する様々な感情と向かい合う少女の物語だけれど、そこに普通とは違うなにかが入り交じることでこの物語は進展してゆく。ある日、テルマは突然に痙攣が起きて倒れてしまう。その原因を探すために検査をするシーンでみせるフラッシュライト効果。日本では昔アニメで使用されて気分が悪くなる人が続出し社会問題になった。実際に、てんかんを調べる検査として脳波検査の中で光刺激反応は用いられている。その検査の様子が日本版のポスターとして採用されている。

いつの時代も、親からの監視に息つまる物を感じている若者は多い。それをSNSを利用することで現代らしさを一気にだしている。劇中の台詞の中に「Facebookで新しい友達が1人増えたね」と親から言われるシーンが登場する。子供目線で冷静に考えたらなんだか不気味である。しかし親目線からみると、思春期の子供を抱える親は自分の子供が何を考えているかわからないことに悩み、子供を知るための一つの手段としてSNSを利用する人も多いようだ。そういった二面性をひとつの出来事からとても上手に表現しているのがこの作品の魅力の一つだ。衝撃のラストまで目が離せない。

(文/杉本結)

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『テルマ』
10月20日(土)よりYEBISU GARDEN SINEMA、ヒューマントラストシネマ有楽町 ほか全国順次公開

監督・脚本:ヨアキム・ヨリアー
出演:エイリ・ハーボー、カヤ・ウィルキンス、ヘンリク・ラファエルソン、エレン・ドリト・ピーターセン
配給:ギャガ・プラス

原題:Thelma
2017/ノルウェー=フランス=デンマーク=スウェーデン合作/116分
公式サイト:https://gaga.ne.jp/thelma/
(c)PaalAudestad/Motlys

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