もやもやレビュー

エールを送りたくなるドロボー『赤ちゃん泥棒』

赤ちゃん泥棒 [Blu-ray]
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『ビッグ・リボウスキ』がちょうど20周年を迎えたことは、あえてスルーしてご紹介したいのが、コーエン兄弟の二作目である『赤ちゃん泥棒』。

本作を初めて観たとき、私はどうも邦題が気になりました。英語のタイトルは『Raising Arizona(=アリゾナ育て)』と、ほんわか家族を思い浮かべるのも無理ないタイトルである一方、邦題には「泥棒」という単語が。遊び心を込めたネーミングなのでしょうが、なんだか主人公のワル者感が拭えなくて、「ちがうの!」と勝手に弁護したくなりました。と、その前にあらすじを。

『赤ちゃん泥棒』は、常日頃コンビニ強盗をしているH.I.(ニコラス・ケイジ)が、刑務所で容疑者の写真を撮るエド(ホリー・ハンター)に惚れて、めでたくゴールインするところからスタートします。ところが、のんびりとサラダデイズ(=多くを知らない、青二才の日々)を過ごしていたら、エドの不妊が発覚。H.I.の前科を考慮すれば、養子縁組の対象に選ばれるはずもなく、ふたりは撃沈します。
しょうがないから、米サウスウエスト一の家具屋を営む夫妻が授かった、5つ子の誰かを盗んじゃおう! その子たちの父親、ネイサン・アリゾナ(トレイ・ウィルソン)は「多すぎるくらいだ」とか言ってたし。
そんな思考回路から、H.I.はエドに指示され、アリゾナ宅に忍び込み、5人のうちのひとりであるネイサン・ジュニアをこっそりお持ち帰り。ふたりは晴れて(?)父母(?)になります。

悪いことをするとバチが当たると言いますが、回ってくるバチをいちいちかわしちゃうふたりが、見ていて爽快です。だってH.I.がおむつを調達した(盗んだ、と読む)ときなんて、数え切れないほど弾丸が発射されているというのに、一撃も受けないわけですから。そんな瀕死状態を見事生き抜き、なんとか親を見繕おうとするふたりは、もはや不器用なのかズバ抜けてラッキーなのか、よくわかりません。
というか、未だに強盗をやめられずにいるじゃないか...。そこには、目を瞑ります。だって、不器用ながらもネイサン・ジュニアを守ろうとする「泥棒」たちの姿に、いつの間にか胸が熱くなっているから。
やっぱりほんわか家族が思い浮かぶ、原題が正解。ちなみに未成年の拐取は刑法224条にあたり、3ヶ月以上、7年以下の懲役ですよ。ご用心。

(文/鈴木未来)

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