もやもやレビュー

『県警対組織暴力』 警察OBが懐かしんだバイオレンス映画

県警対組織暴力 [Blu-ray]
『県警対組織暴力 [Blu-ray]』
菅原文太,梅宮辰夫,池玲子,山城新伍,佐野浅夫,成田三樹夫,田中邦衛,金子信雄,松方弘樹,深作欣二
TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)
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 昔、記者をしていたころ年配のマル暴が「昔はヤクザなんかいくら殴っても無実の罪を被せても問題なかったんだけどなぁ」と空恐ろしい台詞を述べていた。
 現在は建前上、ヤクザとの交際は禁止となっていて、それが暴力団摘発を難しくしているという声も警察関係者から聞いたことがある。実際、ある県警の暴力団担当は元ヤクザをネタ元にしているので、現在の暴力団情報が全く取れないという情けない有様である。
その話を聞いた時「警察もヤクザも同類じゃないですか」と軽口を叩いたら死ぬほど怒られたが、この映画を観る限り「昔は似たようなもんじゃねぇか」という思いを強くする。

映画の舞台は1963年の西日本の地方都市。ヤクザとの交際も辞さない(というより癒着)菅原文太演じる主人公の久能は上層部から暴力団との交際を禁じられ、癒着している組織を潰されてしまう。左遷された久能は報復としてかつて懇意にしていた暴力団から報復として射殺されてしまう。

こう書くと悲壮感あふれる内容だが、癒着している暴力団と敵対するヤクザを取調室で半殺しにした上、無理やり服を脱ぎ取り恥辱を与えるというナイスガイ。映画ゆえの誇張もあるだろうが、それでもこの時代はこうした違法捜査がまかり通っていたのだろうと、OBなどの声から察することができる。

映画の主人公は正義という言葉を用いなかったが、実際の元警察官は違法捜査をしておいて平然と正義を口にしていた。現在の人権意識から考えるとあり得ないが、今日でも無茶な取調べをする警察官がいるというニュースがある度に「まだマシになったのだろう」と変な納得をしてしまう。
当然、相手が暴力団だろうと暴力や恥辱を与える捜査は許されるべきではないが、未だに巨大暴力団が現代日本に厳然と存在していることを考えると「昔の方が良かったのではないか?」という気持ちもなくもない。

もっとも、違法捜査が華やかな時代にも巨大暴力団が大手を振って歩いていた事実を思うと「コイツら、結局昔から癒着してんじゃねぇか?」という疑問が湧かないでもない。

(文/畑中雄也)

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