もやもやレビュー

『エスケープ・フロム・LA』 荒唐無稽過ぎて脳がリラックス

エスケープ・フロム・L.A. [DVD]
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 映画評などを読んでいると、やれ作家性だとか脚本の質だとか小賢しいことを書き並べて悦に入る輩が一定数存在する。しかし、映画なんて元々娯楽な訳だし、いちいち小難しいことを考えるのは愚の骨頂ではないだろうか。プロの原稿でさえ鬱陶しいのに、素人の自称映画通の話を聞いていると殺害したくなる衝動に駆られる人間は少なくないと思う。

 特に現代、景気悪いわ将来は不透明だわ現実が暗澹たる有様なのに、何が悲しくて七面倒臭い映画を視聴せねばならぬのか。そんなに深刻な気分になりたかったら5年後の自分でも想像したら事足りるのではないだろうか。せめて映画くらいはゴミのような現実を忘れて酒でも飲みながらバカ映画を眺め、脳をとろけさせることが今日の賢い生き方なのではないだろうか。多分、違うと思うけど。

 本作はこれまたバカ映画『ニューヨーク1997』の続編だが、前作を観ていなくても全く差し支えない。酔狂にも鑑賞したところで、終わった瞬間に内容を忘れるレベルの代物なので真っ新な気持ちで臨んでほしい。臨むも何も、前作を覚えられないのだから視聴の有無は関係ない。

 そもそも、この映画の内容は地震で島になったロサンゼルスが米国の市民権を失った人間の流刑地になり、主人公が死亡率100%のウイルスを打たれ機密情報を奪取するというもの。書いている筆者も何を言っているか分からないが、そういうシナリオの映画なのだ。内容なんて飾りです、偉い人にはそれが分からんのですよ。

 こんな塩梅の映画なのでストーリーがどうとか説明しようがない。せいぜい印象に残っているシーンを書いてこの映画の間違った方向の素晴らしさをわずかでも伝えられたらと思う。

 まず、主人公が島に行くための道具がサーフボード。本土から隔離された場所にサーフボードで辿り着けるのかという疑問は考えてはいけない。しかも、そのボードは盗んだものという尾崎豊の歌詞のごとき世界。シラフでこんな映画をまともに観られたら病院に診察へ行くことをお勧めする。

 そしてミッション終了後、主人公はタバコの「アメリカンスピリッツ」を美味そうに吸う。禁煙化の波が押し寄せている国で自由の象徴であるアメスピを吸う主人公。嫌煙家どもは激怒しそうな場面だが、こういう映画で怒っていたら体に悪いのでタバコを吸って落ち着いて欲しい。こういうシーンだけでも愛煙家の筆者としては嫌煙家どもめ、ざまぁ見やがれと快哉を叫びたくなるのである。

(文/畑中雄也)

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