『ぼくのエリ 200歳の少女』を見て、名探偵コナンのあの子を思い出す。
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電車や街で、まるで達観したような表情の小学生を見かけることがある。大抵の場合、大声で芸人のギャグを繰り返す同級生をたしなめたり、背筋を伸ばして文庫本に目を落としている。とにかく落ち着き払っているのが特徴で、名探偵コナンで言うところの灰原哀を彷彿とさせる低体温さだ。そんな時に脳裏をかすめるのが、「あいつ、もしかして吸血鬼なんじゃないかな」ということ。
そんなふざけたことを考えるようになった言い訳として『ぼくのエリ 200歳の少女』を紹介させてほしい。原作となった小説を書いたのは、元マジシャンという経歴を持つスウェーデン出身の作家、ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト。ホラーに定評があり、"北欧のスティーブン・キング"なんて表現されることもある。
ストックホルムの片隅に母子世帯で暮らす少年オスカーがこの映画の主人公だ。柔らかそうな金髪に華奢な身体つき。同級生よりも賢く、気が小さい。いじめられっ子のカードは完璧なほど揃っている。北欧の地にしんしんと降る雪とオスカーの孤独が重なり、なんだか見ているこっちまで寒さを感じるほどだ。そこに現れるのが、隣に引っ越してきた謎の少女、エリである。年を聞くと「だいたい12歳」だという。一体、何者なのか。オスカーはエリが気になって仕方がない。そりゃそうだ。コートも着ずに半袖姿で、すこぶる顔色が悪いのだから...。そして、この二人が育む友情と初恋は、予想もつかない方向へ進んでいくのである。
単純なヴァンパイア映画と呼ぶにはあまりにも勿体ない。ホラー映画に抵抗がある人にこそ見て欲しい作品である。そして、もし街で遠い目をした小学生を見掛けることがあったら、この映画のことを、雪のなかで出会った二人のことを思い出して欲しい。
(文/峰典子)