コミュ障な自分を変えたい人に観てほしい『アンコール!!』

　些細なことが原因で長年会話していない友達や家族がいたり、ギクシャクした関係性が面倒くさくなり、自分から関係を修復することを諦めてしまった経験がある人は多いのではないだろうか。自分がどれだけかっこ悪くても、「意思を伝えた方が良い」と背中を押してくれる1本を発見した。その名も『アンコール!!』。本作の主人公は、ビックリするほど頑固なおじいちゃんだ。

　頑固な性格から、周りの人にも溶け込めず、息子との間にさえ深い溝があるアーサー。そんな彼が唯一、心を開き、素直になる相手、それは妻のマリオンだった。マリオンはアーサーと違い、趣味で所属している合唱団「年金ズ」でみんなから愛される人気者。しかし、ある日突然、マリオンのガンが再発してしまう。一方で「年金ズ」は、国際コンクールの選考大会に出場することに。病気で練習に行けなくなったマリオンに「代理でコンクールに出場してほしい」と頼まれたアーサーは「バカバカしい」と思いながらも妻の願いを叶えようと「年金ズ」に参加する。

　「年金ズ」が歌うのは、懐かしいロックやポップのヒット曲。おじいちゃん世代が聞いたらびっくりするほどのスラングも使用して、パフォーマンスするのだ。そんな個性派合唱団を指揮するのは、音楽教師エリザベス。恋愛でダメダメでも、みんなの前ではポジティブな彼女の悩みを聞きながら、共に練習するアーサーは、徐々に人との壁を薄くしていく。少しずつ心境が変化し、長年ギクシャクしていた息子との関係を修復しよう頑張るのだ。息子との間に流れる冷たい空気はなんとも言えないが、本作を観ているうちに「もっと素直になって！」とアーサーを応援したくなってしまう。

　そんな「応援したくなる」本作だが、ハンカチは必ず用意してほしい。なぜなら、マリオンが予選で力を振り絞ってシンディ・ローパーの「True Colors（トゥルー・カラーズ）」を披露するシーンには思わず涙してしまう程の愛を感じるからだ。

　アーサーの頑張る姿を観れば、長年自分を変えずに生きてきた人、頑固な自分を変えたいという人は必ず心に響くものがあるだろう。

（文／アヤカ）