もやもやレビュー

物語が起動する爆発力と、すべてが一直線に繋がる快感『パルプ・フィクション』

パルプ・フィクション [DVD]
『パルプ・フィクション [DVD]』
ジョン・トラボルタ,サミュエル・L・ジャクソン,ユマ・サーマン,ハーベイ・カイテル,ティム・ロス,アマンダ・プラマー,マリア・デ・メディロス,ブルース・ウィリス,クエンティン・タランティーノ
ワーナー・ホーム・ビデオ
商品を購入する
>> Amazon.co.jp
>> HMV&BOOKS

 わずか監督2作目にして、カンヌ映画祭で最高賞であるパルム・ドールを手にした鬼才クエンティ・タランティーノ監督。その受賞作が、『パルプ・フィクション』です。

 作中で描かれるのは、レストラン強盗を企むカップル、裏切り者を始末しに行った道中でトラブルに巻き込まれる2人組のギャング、八百長試合のリングにあがるボクサーなど、一見するとバラバラに見える話ばかり。ですが、話が進むにつれてそれぞれの要素が符合し噛み合った時、一つの連なった物語が、目の前に立ち現れます。

 ともすれば、どれもがくだらない話(パルプ・フィクション)に思える中で、過ぎ去って行ったシーンが「意味を持った話」に変化する瞬間は、とてつもない快感です。

 映画の冒頭で、エンジンを蒸かすかのようにかかる『Misirlou(ミザルー)』。一度は耳にしたことがあるこの曲は元々、アラブ・イスラエルといった東アジアで舞踊曲として作られたもので、本作で使用されているのは1962年にディック・デイルによってアレンジされたカバー曲。他にもたくさんのアーティストにカバーされていて、心躍る曲のテンポは、時代も国も軽々と越えてしまうようです。

 疾走感溢れるギターリフに襟をふん掴まれるような、オープニングの吸引力を体感するだけでも、一見の価値がある本作。公開から20年近く経った現在でも、まったく古びない格好良さと遊び心を、ぜひ目に焼き付けてみてください。

(文/伊藤匠)

« 前の記事「もやもやレビュー」記事一覧次の記事 »

BOOK STANDプレミアム