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あまちゃんがよぎった。『世界はときどき美しい』

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 自分の生きている世界、社会について、なんだか見直してみたくなる映画を観ました。
 本作で劇場監督デビューを果たした御法川修監督の『世界はときどき美しい』は、2007年に公開。全編8ミリフィルムで撮影後にデジタル変換をした独特の映像美が広がります。5つの短編から構成されたアンソロジーで、各エピソードの主人公それぞれの一人称で胸中が語られています。

 主人公は、皆それぞれに日々葛藤しながら生きる等身大の人間です。
 東京で11年も絵画教室のヌードモデルをしている野枝38歳(松田美由紀)は、体調を崩し通院生活を続けています。大阪で路上の稼業をする蠅男(柄本明)は、弱気になろうとも、その悲しみを埋めるように、毎晩街へ繰り出しては酒に溺れる毎日です。まゆみ(片山瞳)は恋人とのとりとめのない会話をするが、かみ合わず、自分が彼を好きなのかと思います。北の町で天文台に勤務する柊一(松田龍平)は、避妊の失敗により彼女を妊娠させてしまいます。父親になる実感がまだわかない柊一と、それに対し不安な気持ちで接する彼女。また、旅行代理店に勤めながらひとり暮らしをしている花乃子(市川実日子)は母と兄と行った墓参りの帰り際、母の孤独と老いを思いやります。「母のことを、私は何も知らない」と。

 このように、それぞれ明るいとは言えない境遇ですが、皆どこか共感できるところがあります。体調を崩すと弱気になりますが、健康でいることのありがたさを感じ、生かされているんだと感謝の気持ちが芽生えたり。ダメだとわかっていてもお酒に頼りたくなったり。相手に対する気持ちに、自信が揺らいだり。置かれた境遇に追いつけない不器用な自分を嫌になったり。そして、親との関係や親への接し方など......誰しも経験しそうな悩みを抱えながら。それでも前向きに生きる姿や人生を受け入れ、あるがままに生きようとする主人公たちの姿が、独特の映像と音楽と伴って印象的です。

 SNS疲れや、現代社会に疲れてしまった時に観ると、少しだけ心が軽くなるような映画です。あと、あまちゃんに出ていたミズタクはもちろん、メガネ会計ばばあでお馴染みの木野花さんや、能年ちゃんのパパ役の尾美としのりさんが出ていて、あまロス解消にもなるかもしれません。っていうかもう「あまロス」って古いのでしょうか。時間の流れの速い現代社会にこそ観てもらいたい一本です。

(文/森山梓)

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