『ライフ・イズ・ビューティフル』を観たのに、一粒の涙も出ないことに新年早々腹が立った。
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年末、久しぶりに実家に帰ったら、家族にすら人見知りしている自分に愕然としました。これはいかん! 感情を奮い立たせねば! というわけで、部屋に籠もって観た『ライフ・イズ・ビューティフル』。
号泣必至! 感動必至の超名作! そんな風に紹介されることの多いこの映画。内容がナチスの強制収容所に入れられる話なのに『ライフ・イズ・ビューティフル』ときた。もうタイトルからして名言です。ネットにも「ラストは絶対泣く!」「あのシーンを観てから涙が止まりません。誰か私にハンカチを売ってください」など号泣を示唆する言葉が並んでいました。そういうのを観る前に読んじゃったせいでしょうか。もしくは感情を奮い立たせたいという思いが強すぎたせいでしょうか。泣けない。ちっとも涙が出てきません。しかも途中で、前に一度観たことがあったことに気付きました。ロベルト・ベニーニが「ボンジョルノ、姫様」と言った瞬間です。あれだ! 昔観たあれだわ! とか思った瞬間、王様のブランチの姫様が頭から離れなくなり(マジでくだらない。なんなの)、もう完全に台無しになりました。最悪です。そしてこの文章、ほんとどうでもいいことしか書いてありません。
ただひとつ教わったのは、やっぱこれです。思い込みひとつで世の中は楽しく生きられるということ。お経のようにここは楽しい。これは楽しいイベントなのだ! と唱えるだけ。簡単です。謎の念仏を唱えながら、意を決して、家族が団らんするリビングへと歩みを進めました。そしてわかったことがあります。家族は温かかった。念仏もスルーしてくれました。これは感情を高ぶらせる映画ではなく、ホッカイロを抱きしめたかのように温かな気持ちになるための映画です。いい一年になりそうです。
(文/鬱川クリスティーン)