夏が足りなくて、慌てて『ホテル・ハイビスカス』を観た。
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なんて、夏を謳歌しなかったのは、今年に限ってみたいなニュアンスを出してみましたが、もちろんそんなことはなく、最近に限らず、私の人生に夏が足りていたことなんてありません。夏を満喫していたのは、物心がつく以前のこと。あぁ物心、厄介なシロモノめ。
例えば、海、山、キャンプ、野外フェス...あたりに参加すれば、今頃慌てて夏不足に騒ぐことはないのでしょうか? だって、盛り上がるタイミングとかわからないし。なんかドキドキしちゃうし。ハッ、そもそも一緒に行く友達もいないんだった!
さーて。この映画には、物心がつく以前の夏が溢れていました。舞台は沖縄。主役は小学三年生の女の子、美重子。家族は、美人で働きもので恋多き女の母ちゃん、働きはいまいちだけど気のいい父ちゃん、黒人とのハーフのにぃにぃ、白人とのハーフのねぇねぇ、そして、おばぁ。
ジリジリと照りつける太陽、まとわりつくような湿度。そして、無防備にさらされた余貴美子演じる、母ちゃんのたっぷりとした白い二の腕。素晴らしき、包容力。見るがいい、若い女たち。そこへ、沖縄の方言や沖縄独特の風習や伝承が散りばめられています。見ていると、どんどん解放的な気分になっていきます。何より、美重子がいい。この子、スーパーエナジーガールです。昨今のおりこうすぎる天才子役にはない、まぶしすぎるアホな子供、ザッツ生命体を好演。美重子を見ていると毎日が冒険しているみたいにワクワクとしていた、あの感じを思い出しました。熱風になぶられ、海やプールで泳ぎ、疲れたら昼寝して...。わざわざ人間も自然の一部だなんて言葉にしなくても、当たり前に感じていたような気がします。
筆者、ぼんやりと夏をやり過ごしてしまい、知らずに溜め込んだ澱のようなもので最近どんよりとしていましたが、その理由が今わかりました。意味なくはっちゃけても許されるムードがあるのが夏だったのか。だからみんな浮かれて弾けていたのか...。よーし、来年からはタイミングが悪くても、たとえ一人でも、夏らしいことをして弾けてみることにします。
(文/森亜紀子)