もやもやレビュー

『八日目の蝉』が素晴らしすぎて母親にメールした。

八日目の蝉 通常版 [DVD]
『八日目の蝉 通常版 [DVD]』
井上真央,永作博美,小池栄子,森口瑤子,成島出
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八日目の蝉
『八日目の蝉』
角田 光代
中央公論新社
3,480円(税込)
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 不倫でできた子供を中絶し絶望していた女が、不倫相手と奥さんの間に生まれた女の子を衝動的に連れ去って世間から隠れながら自分の子供として4年間育てます。その後女は逮捕され、時は流れて本当の家族のもとで育った女の子は大学生になり、誘拐された過去、家族と上手くいかない現在と向き合います。『八日目の蝉』は角田光代原作の小説で2011年に映画化された話題作。第35回日本アカデミー賞では10冠を獲得しました。主演の井上真央、助演の永作博美が揃って主演、助演女優賞を受賞していることからもわかるように役者陣の演技力が半端じゃないです! 役者になりたいです! そしてモテたいです! むしろ役者はいいからモテたい。
 中絶の影響で妊娠できない体になった女は、指名手配から逃げながら赤ちゃんに全力の愛情を注ぎ、手さぐりながら懸命に子育てをします。その愛の深さを示すように「この子さえいればもう何もいらない」「一日でも長くこの子と一緒にいたい」というような言葉が原作に何度も登場します。誘拐という重い事件を描きながら、犯人である女の、赤ちゃんに対する愛情がとにかく深く、幸せな親子のストーリーを見ているかのような感覚にも陥ります。むしろこのまま家族でいいじゃない! と何度も思いました。特に誘拐犯役の永作博美のお母さんぶりが素晴らしく、子供を見つめるまなざしは、本当の親子みたいです。もう、私のお母さんになってくれ!! 
 やがて女は逮捕され、まさに命がけとも言える愛情を受けて育ったこの子は、本当の家族のもとに戻ります。本来ならば幸せなことなのですが、不倫に誘拐と様々な問題を背負った家族はそれほど上手くいっておらず、責任をなすりつけ合う親ともぎくしゃくした関係のまま、彼女は大学生になり、自分もまた不倫の子供を妊娠します。この大学生になった女を井上真央が演じています。上手く愛情を注げない本当の両親、命がけの愛情を注いだ誘拐犯の女。そんな自分の過去。いろんな人の複雑な事情と向き合って、彼女はすこし大人になります。そして自分のおなかに宿る小さな命に感動します。最後に昔誘拐犯と暮らした小豆島を訪れ、「わたし、なんだろう。もうこの子が好きだ。」と井上真央が泣くシーン。原作にはないシーンなのですが、素晴らしい演出だと思います。筆者もパソコンの前で号泣してました。多分でっかいテレビだともっと泣いてました。誰かください。
 愛情とか、幸せとか親子とかいろんなことを考えながら思わず号泣でラストを迎え、感極まって「いつもありがとう」とお母さんにメールを送りました。すると「お金なら送りませんよ」と返ってきました。愛情はいつも難しい!!!
 愛とは何かを考えさせられるとても素敵な映画でした。ぜひお母さんにメールを!

(文/前髪ナガレ)

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