もやもやレビュー

常識という物差しでブスを見てはいけない。『アイ・アム・レジェンド』

アイ・アム・レジェンド (ハヤカワ文庫NV)
『アイ・アム・レジェンド (ハヤカワ文庫NV)』
リチャード・マシスン,尾之上浩司
早川書房
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アイ・アム・レジェンド [Blu-ray]
『アイ・アム・レジェンド [Blu-ray]』
ウィル・スミス,アリーシー・ブラガ,ダッシュ・ミホック,フランシス・ローレンス
ワーナー・ホーム・ビデオ
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 突然ですが、ブスは悪でしょうか。かわいそう存在でしょうか。たまにテレビドラマとかで、ブスがひょんなことから(主に整形かダイエット)美人になるみたいな設定があります。でも、美人になってみたものの、美人は美人なりに意外と生きにくかった、という結論を敷き、なんとなくブスの気持ちが汲まれている感が醸し出されます。けれど結局、ブスはみんな美人になりたいと思ってるはず!という前提が見え隠れ。この世界はやはり美人至上主義。童話でだって、美人がブスになっても最終的に美人に戻るくらいですから。

『アイ・アム・レジェンド』には2つの世界があります。
 人間を醜悪な化け物に変えてしまうウィルスが蔓延し、廃墟と化したニューヨーク。そこにたったひとりの生き残りとして犬と一緒に暮らしている、主人公のウィル・スミスが生きる人間界。そして、ダーク・シーカーズと呼ばれる化け物たちにも、世界があります。

 本編のラストは置いておくとして、DVDに収録されている別エンディング、また同名の原作本は、自分、あるいは今の社会の物差しでは測ることのできない世界があると気づかせてくれます。
 自分と同じ考え方を持っている人とそうでない人。自分に近しい立場の人とそうでない人。勇者と魔物。美人とブス。善と悪はどちら側の視点に立つかで自在に切り替わる。いつでも私たちは自分の価値基準の中でしか生きられないけれど、別の世界の価値を想像できる程度には生きていきたいと、そんなことを思わせてくれる『アイ・アム・レジェンド』の別エンディングと原作本でした。

(文/鬱川クリスティーン)

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