『ドラゴン危機一発』が一髪ではない理由。
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- ブルース・リー,マリア・イー,ジェームス・ティエン,ロー・ウェイ
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Facebookに「今日は飲みに行きたい気分♥」と書き込みをしたら、ほとんど話したことのない人から「いいね!」がひとつだけ付いていました。有り難いことです。前向きです。
というわけで映画です。一度も観たことがなかったブルース・リーものを観てみようと、『燃えよドラゴン』と間違えて『ドラゴン危機一発』を観ました。「黒ひげ危機一発」と同じく、危機一髪ではなくて危機一発です。
舞台はタイ。製氷工場を隠れ蓑に麻薬密売を行うギャング・ファミリーに仲間を殺され、ブルース・リーが復讐を行うという話。氷を切断する機械で死体を切断したりとか、思いの外スプラッター。夜食を食べながら観たことに後悔しました。
というか、Facebookの寂しさをスカッと晴らそうと思ってみたのに、全然すっきりしませんでした。今回のブルース・リーは、死んだお母さんの遺言により、なんと戦いを避けているという設定。戦いか!と思うと、決まってリーは胸のネックレスに手を当てて、オルゴール曲が流れてきます。「あ、戦ってはいけない」。ブルース・リー、お母さんの遺言を思い出して戦うのをやめてしまします。寸止め酷い。
そういう設定は、やめてほしいものです! 何度も心の中で言いました。
けれど、ふと思いました。「危機一発」とは、もしかしたらそういう意味でつけられたのかと。そういう意味というのは、黒ひげ危機一発的なことです。黒ひげ危機一発も、ビヤ樽にナイフを刺すたびに、来るか来ないかのドキドキ感、裏を返せば寸止め感を味わえるのが醍醐味です。それと同じように、『ドラゴン危機一発』も戦いの気配のたびに、来る? 今度こそ来ちゃう? あぁ~来なかったぁ、という気分が味わえるというわけです。これはまさに黒ひげ危機一発です! つまり醍醐味は、そこにあったのです。
それでも最後は、ブルース・リーのキレまくったアクションが観られます。しかも寸止めされまくっていただけに、ありがたみもひとしおというわけで。
実は考え抜かれた邦題だったのかもしれない『ドラゴン危機一発』でした。
(文/根本美保子)