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プロレス×映画

悪の司会者とプロレス界の稀代のクズ責任者が重なる『バトルランナー』

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 プライベートで色々ありつつも、主演作『ラスト・スタンド』で俳優業完全復帰を果たしたシュワルツェネッガー御大。数多あるシュワ作品の中で、筆者的にプロレス的!と感じるのがこの『バトルランナー』(1987)です。

 スティーブン・キングの別名義リチャード・バックマンの小説を原作とする本作。警察国家が一般市民を徹底統制する一方、唯一の娯楽として、反乱分子や罪人を「ランナー」に見立てそれを「ハンター」達が狩る「ランニング・マン」なるゲーム番組が人気を博している、というディストピア物。
 無差別粛清命令に背いて反逆罪を負わされた元警官ベン・リチャーズ(シュワ)が、地下組織のメンバーと協力して強制労働所を脱獄。しかし、その才能に着目した「ランニング・マン」の司会者キリアンによって再び捕らえられ、欺瞞に満ちた"死の鬼ごっこ"に参加させられる流れ。

 捏造された映像で大量虐殺者にされたリチャーズを含めて、ランナーがあくまで極悪人(ヒール)として観覧者や視聴者に紹介される辺りはいかにもプロレス的だし、ハンターの面々なんてどいつもこいつもプロレスラー然としたキャラクター揃い。
 実際、(初戦であっさり死亡するジョバーな)サブゼロ役のプロフェッサー・タナカ、(本作最大のライバルかと思ったら結局何もしてない)キャプテン・フリーダム役のジェシー・ベンチュラは元プロレスラーなワケですが。

 さて、本作の敵ボスとなるのが人気司会者であり実質番組最高責任者のキリアン。
その絶対的地位を使って政府関係筋に脱走中のリチャーズ捕獲を要請。さらにハンターの同時登用などの演出面での強権発動、さらに終盤ではリチャーズにハンターとしての契約を持ちかけるなど権力をカサに着た行動が目立つ人物です。
 
 このキリアンのような人物が、90年代WWF(現WWE)にもいました。"月曜プロレス戦争(※)"を仕掛けたことで知られるエリック・ビショフです。WCW副社長だったビショフはオーナー(80~90年代に映画スタジオやTV局を買収し、メディア王と呼ばれたテッド・ターナー)から番組運営全権と潤沢な予算を与えられるや、視聴率のためにWWFの収録内容を暴露したり、WWFの大物選手やライターを巨額契約金で引き抜いたり、やりたい放題を尽くした人物。いわゆる責任者ギミックとしては今も尚、最大級レベルのヒールとして認知されているほどです。

 物語では、スタジオに舞い戻って来たリチャーズによって、ランナー用のロケットコースターに押し込まれて大爆死という最期を遂げるキリアンさんですが、実はビショフも後年のWWE時代に悪党GMとして活躍するも(番組ストーリー上)宿敵ビンス・マクマホン会長によって解雇され、挙句にゴミ収集車に投げ込まれて会場からつまみ出されています。

 それぞれ身体を張ったオチで観る者の溜飲を下げる大役を果たした、という意味でも両者の類似性は高いのであります。

(文/シングウヤスアキ)

※:1995年、WCWがライバル団体WWFの生放送番組「RAW」に対抗して「マンデー・ナイトロ」をぶつけ、そこで行われた引き抜き合戦、暴露・中傷合戦などを含む苛烈な視聴率争いが「月曜プロレス戦争(マンデー・ナイト・ウォーズ)」。1995年から2001年まで続いた中、最終的にWCWの自滅によりWWFの1人勝ちとなりましたが、当時アメリカで第3勢力だったECWが両団体の引き抜き合戦に巻き込まれる形で崩壊するなど、プロレス業界にとって大きな転換点とされています。

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シングウヤスアキ

会長本人が試合までしちゃうという、本気でバカをやるWWEに魅せられて早十数年。現在「J SPORTS WWE NAVI」ブログ記事を担当中。映画はB級が好物。心の名作はチャック・ノリスの『デルタ・フォース』!

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