トンデモジャパンな映画を観たいなら『リトルトウキョー殺人課』が超マスト
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極真空手の選手として活躍したことから日本との馴染みも深いとされる大物アクション俳優ドルフ・ラングレン。そんな背景が感じ取れる1991年の主演作『リトルトウキョー殺人課』ですが、ブルース・リーの息子ブランドン・リーとの競演作というレア感すらマイナス方向に作用させるほどの"トンデモジャパン"っぷりで、珍作界でも一目置かれる逸品でございます(監督はあのシュワちゃんの『コマンドー』のマーク・L・レスター)。
日本文化と武士道に精通する白人刑事(ラングレン)と、日本文化なんてダッセーよな的思考の日系刑事(ブランドン)が、ロサンゼルスのリトル・トーキョーに巣食うヤクザ組織壊滅のため大暴れするお話、なのですが、まず観る側の覚悟を試すのが言語問題。
出て来るヤクザは日系人かも怪しく、ほぼカタコトの日本語かつ英語までおかしい輩も居るうえ、当のラングレン兄貴も空手はマスター出来ても日本語までは無理だったらしく見事にカタコト。
しばしばカタコトにカタコトを被せてくるため、字幕アリでも何語で話しているのか定かでなくなるトリップ状態に陥り、中盤に入る頃にはカタコト禁断症状を発症します(ハゲ幹部だけまともな日本語なのが許せなくなる等)。
欧米プロレス界でも60年代から裸足に田吾作タイツ(今でいうレギンス?)で塩を凶器に使う日本人ヒールギミックが定着しましたが、このギミックで有名だった「プロフェッサー・タナカ(俳優としても活躍)」は、ハワイ出身の非日系選手で日本語はほぼしゃべれなかったとか。
要は"それ"っぽければ良かったワケですが、日本の伝統やアート面に注目が集まり出す80年代になると、歌舞伎ギミックの「ザ・グレート・カブキ」が、あらゆる意味でしょっぱい塩攻撃に代わる「毒霧」という日系ギミックの定番技を生み出し、カブキのコンセプトにさらに忍者ギミックを盛り込んだ「グレート・ムタ」の登場も相まって、ファンタジー要素の強いオリエンタル・ギミックが人気を呼びました。
本作には日本の任侠映画のオマージュ的シーンがあるものの、製作サイドの広くて浅い日本文化への見識がファンタジー方面にズレ込んでしまったようで、女体盛りに始まり、主人公がひとりでDIYしちゃったという謎日本屋敷では、掛け布団のない骨組み(やぐら)だけの謎コタツと何かが違うトンデモジャパン。
プロレスのトンデモジャパンといえば、WWF(現WWE)で王者にもなった相撲ギミックの「ヨコズナ」のタイツマワシやら入場用衣装が浴衣だったのに違和感を覚えたものですが、本作のクライマックスは、そんな違和感など気の迷いレベル。
謎の法被と闘魂・日の丸ハチマキを巻いたラングレン兄貴がヤクザの本拠地へ突入すれば、その姿のまま銃撃戦を展開し、何故か爆竹が鳴り響く謎の大名行列パレードの中で両親の仇でもあるヤクザの親分(ケイリー・ヒロユキ・タガワ)と最終決戦へ。
中国文化との混同を経て(※)、時代劇の大名行列における平伏シーンを曲解した珍妙エンディングは必見。前向きに時間を無駄にするならこの作品はオススメです。
(文/シングウヤスアキ)
※ちなみに現在のリトル・トーキョーの人口比率は、日系人より韓国・中国系移民が多いらしいので、あながちあのクライマックスも間違ってないのかも!