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プロレス×映画

レスラー出演映画シリーズ:オースチン×セガールのダブルで振り幅ゼロ感が気持ち良い『沈黙の監獄』

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「プロレスラー出演映画シリーズ」として今回ご紹介するのは、元WWEトップスターであるストーンコールド・スティーブ・オースチンとアクション界の無双仙人スティーブン・セガールのダブル主演と聞いて、変な期待が膨らまないワケがない『沈黙の監獄』(2012)。

 秘密刑務所閉鎖の任務を請け負ったクロス(セガール大先生)とその相棒マニング(オースチン)が率いる民間軍事会社が、国家機密を握る女囚人を狙う謎の集団の襲撃に遭うも、セガール無双&オースチンの骨太アクションで迎え撃つお話。
 大先生の生え際ツルツルなのに何故かミッチミチなスーパーハード・ヅラ感も要チェック項目ですね。

 個人的にも気になっていた本作。セガール大先生がプロデューサーを務めるということもあり、大雑把な監獄バトルを予想していたら、意外や意外、軍事専門家が監修しているのか、B級アクションにしてはなかなか本格的な部隊行動描写。敵も味方もタクティカル・ベストやバリスティック・アーマーを着用しての銃撃戦や、監視カメラ映像を多用するなどの点でも、この系統FPS/TPSゲームをプレイしている方ならニヤリと出来る演出になっています。

 敵ボス役がB級アクションの雄マイケル・パレというのも、近年セガール作品にしては珍しく対立構図がしっかりしている点で、直接対決まで多少前向きな期待を抱かせてくれるというもの。
 さらに護送待ちだった危険な囚人たちも加わるプロレス的三つ巴展開になりますが、こちらは見事な出オチ系ジョバー。清々しいヤラレっぷりを堪能させてくれます。

 そんな感じで脇役の頑張りが光ってしまっている本作ですが、ご安心下さい。主演の二人のどこまでいっても"俺流"です!

 オースチンは武器(銃や爆発物)の専門家という設定なのに、奇襲とはいえ遮蔽物に隠れず棒立ちフル掃射の無鉄砲ぶりで、そもそも武器よりトンチを利かせた小道具攻撃など、プロレスでいうストリート・ファイト戦っぽい白兵戦がメイン。俳優オースチンは「オースチン」しか演じられない、この幅の狭さが売りでしょう。

 いやいや、それを言ったらセガール大先生こそが「セガール」しか演じられない稀代の振り幅ゼロ俳優。

 何かおかしいけど誰も指摘出来なかった感溢れる俺流珍妙銃撃シーン(脇役の方々がちゃんとしているので余計目立つ)に、いつものパタパタ合気道でノーダメージ無双。多少の期待を持って迎えたパレ演じる敵ボスとの直接対決では、肉弾戦になるや一切相手の攻撃を許さずに(敵が設置した爆弾で)爆殺しちゃう完全無敵のセガール拳。

 まさかのまともな序盤で不安に駆られるも、後半はニンマリ出来る本作。オースチン×セガールの相乗効果の結果が"気持ち良いほどの振り幅ゼロ感だった"というこの発見を多くの人に観て感じて頂きたいところですが、あくまで視聴は自己責任ということは言うまでもないのであります。

(文/シングウヤスアキ)

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シングウヤスアキ

会長本人が試合までしちゃうという、本気でバカをやるWWEに魅せられて早十数年。現在「J SPORTS WWE NAVI」ブログ記事を担当中。映画はB級が好物。心の名作はチャック・ノリスの『デルタ・フォース』!

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