鳴り物入りで入団も珍妙ギミックが待っていた若手選手的主人公の『ロック・オブ・エイジズ』
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今も昔も多くの若者が夢を抱いて門を叩くショウビズ界。なかでも特にケバケバしかった80年代音楽シーンのひとコマを描いたのが『ロック・オブ・エイジズ』(2012年)です。原作のミュージカル同様、80'sヒットチューンをストーリーに組み込み、日本でも洋楽好きが多いアラフォー世代を直撃したミュージカル映画です。
80年代後半、ロック文化を敵視するLA市長夫人による清浄化計画で立ち退きを迫られていた名門ライブ・ハウス「バーボンルーム」。そこでロック歌手を目指す青年ドリューが、同じく歌手を目指すシェリーとフォーリン・ラヴ。
しかし、税金支払期限が迫るバーボンルームが、資金集めのために昔のツテで招聘した大物スター、ステイシー・ジャックス(トム・クルーズ)のライブを機に歯車が狂い始め・・・でも信じることを止めない心で大逆転しちゃうお話。
物語が動く中盤。バーボンルームが破滅の道を辿る中、ドリューは恋人のシェリーがステイシーと浮気したと勘違い。衝動的に別れを切り出し、その後降って湧いたスカウト話に乗ってしまいます。
ところが音楽業界の流行はヘア・メタル的ロックからポップなボーイ・バンド(モロにNew Kids On The Block風)へ。ロック青年ドリューは珍妙アイドルへの路線変更を余儀なくされ、一方で捨てられたシェリーはストリッパーに身を落とし、大物ステイシーもマスコミに叩かれ落ち目が露わに。
ことプロレスになるとこの状況は日常茶飯事。インディや日本マットでの実績を買われようやくメジャーWWE進出と思ったら、ストーリーの都合で電報配達員としてTVデビューしたブライアン・ケンドリックは、その後も売名行為で会場内を全裸疾走するなど押しかけ契約を狙うギミックを経て、すでに人気者だったシナとの抗争のためにヒップホップギミックへの路線変更を強いらます。そして気付けば退団という転落ロード(しばらくして復帰しましたが)。
しかし映画本編はバーボンルームのオーナー(アレック・ボールドウィン)と古参店員のホモォなシーンから事態が好転。王道ベタ展開でハッピーエンドへ至ります。
ステイシーの計らいによって、ドリュー&シェリーが超満員のスタジアムライブで持ち歌「Don't Stop Believin'」を披露するクライマックス・シーン。ハルク・ホーガンが自身の主演映画『マイホーム・コマンドー』に出演した(当時レスラーとしては燻っていた)マーク・キャラウェイをWWF(現WWE)に紹介、のちの大スター・アンダーテイカーを生んだ経緯と重ならなくもありません。
とまあ、リア充ザマァと思いながら観てたら、ピュアビリーバーなリア充にバカ負けする本作。目玉はカリスマロックスターを演じたトム・クルーズらしいですが、個人的には、超保守的な市長夫人を演じたキャサリン・ゼタ・ジョーンズが、最後にはマドンナみたいなボンデージ姿になるという怪演が見どころ。
ちなみに大物レスラー、ケヴィン・ナッシュもステイシーの用心棒の片割れとして出演しています。
(文/シングウヤスアキ)