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プロレス×映画

プロレスラー出演映画シリーズ:『ミル・マスカラスのビバ!ルチャシネマ×2』

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 プロレスラー出演映画を紹介する上で避けて通れないモノ。それは「ルチャ映画」。今はそれほどでもないようですが、メキシコでは60年代から80年代にかけて、宗教にも等しいルチャ人気にあやかった勢い任せの映画が大量に製作されていた模様。

 今回紹介するのは、日本国内でもマスカラス・ブーム(70年代後半から80年代前半)の時期にTBSで放送されたこともあるらしい『ミル・マスカラスの幻の美女とチャンピオン(便宜上「前編」)』(1970)とその続編『荒野のルチャ・ライダース 地底王国を撃破せよ!(便宜上「後編」)』(1972)の2本を収録した『ミル・マスカラスのビバ!ルチャシネマ×2』。

「マスカラスの」とありますが、マスカラスは準主役で、実際の主役はブルー・デモンというカリスマ・ルチャドール。日本でいうと馬場×猪木の猪木。近代WWEで喩えると、シナ×エッジのエッジ的なルード(悪党)上がりの人気者という感じ。いずれもあくまでイメージです。

 さて、まずは「前編」。
 ブルー・デモン率いる"正義の戦士軍"がバイクで疾走する謎のオープニングから、いきなり長々と試合になったかと思えば、試合直後に悪の総帥ネグラ博士の手先に銃撃されるわ、ミス・メキシコ審査員を務めたら美女たちは誘拐されちゃうし、仲間も拉致されて洗脳されちゃうわでもう勘弁ならん!的な内容。

 強化改造されたミゼット末端兵と敵幹部たちと行く先々でバトルを繰り返し、ネグラの本拠地で最終決戦の流れですが、ルチャ映画は殺陣もルチャ! 打撃はチョップ、ストンピング! 倒されたら受け身! 水中戦も何となくルチャ風味! ビバ! メヒコ!
 さらに70年代のトンデモ映画のノリに加え、JAZZYなシャレオツBGMに乗せて10分に1回はルチャバトルが続くシュールな映像に貴方の思考は停止することでしょう。

 そして「後編」は地底人とのバトルを描いた作品(前作との繋がり一切ナシ)。
 正義の戦士軍がマントはためかせて荒野をバイクで疾走するオープニングからネズミ人間(無論ミゼット)によって富豪が拉致される事件が発生。戦士軍よ、多発する拉致&国家脅迫事件を解決せよ!という内容。

 政府公認ヒーロー(前編から?)となった戦士軍でしたが、街中をバイクで疾走するその様は完全に変質者であり、地底人による要人誘拐をまるで防げないなど前編以上にポンコツな彼ら。でも黒幕であるマヤ一族末裔の本拠地に突撃して捕まったと思ったら、なんやかんやで事件解決。

 今回はストーリー的に多少の努力が伺えるものの、グダグダな展開と雑な殺陣シーンが眠気を誘う上、敵側にマスクマンが増えたせいで前編以上に敵・味方の区別がつきません。しかし、そんなことはどうでもいいのです。

 戦士軍アジトでのラストバトルで幹部のマスクマンをビルの窓からぶん投げたと思ったら、次の瞬間、解放された拉致被害者たちが「正義の戦士に乾杯!」と祝杯を上げるシーンからエンドロール! 驚愕の投げっぱなしエンディングで、気分はまさに某ポルナレフ!

 数少ないまともな見所は、後編序盤の試合シーン。前編の試合シーンが"撮影用"だったのに対し、後編はほぼ実際の試合として収録しているので迫力が違います。ルチャでは割りとお馴染みな円陣ボート漕ぎ風合体攻撃は必見。

 とまあ、いずれにせよ並の珍作ではないので、視聴の際は覚悟のほどを!

(文/シングウヤスアキ)

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シングウヤスアキ

会長本人が試合までしちゃうという、本気でバカをやるWWEに魅せられて早十数年。現在「J SPORTS WWE NAVI」ブログ記事を担当中。映画はB級が好物。心の名作はチャック・ノリスの『デルタ・フォース』!

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