君の「バカと天才は紙一重」観が試される『バカルー・バンザイの8次元ギャラクシー』
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「バカと天才は紙一重」なんていいますが、超展開に陥り易いSFやホラーモノはこれを地で行くジャンルともいえるかと思います。そこで今回のお題は、80年代のカルトSF映画『バカルー・バンザイの8次元ギャラクシー』(1984)。
物理学者兼脳神経外科医にしてロックバンドのボーカルという日系エリート男バカルー・バンザイ(ピーター・ウェラー)は、次元波動装置の実験で8次元に突入し、異星人の存在を証明する異物を入手。
しかし、実は8次元に幽閉されていた異星人たちは、バカルーの装置を使って故郷の星に帰ろうと画策。一方でその異星人「赤族」を幽閉した「黒族」が地球サイドに対し、危険分子である「赤族」の帰還を阻止出来なければ、アメリカとソ連による核戦争を誘発させると恫喝。バカルーと仲間たちは地球の危機を救えるのか・・・という超展開トンデモSFコメディ。
ハイパーメディアクリエーターも真っ青の超マルチなバカルー氏が超展開に巻き込まれる本作ですが、プロレスで超展開なギミックを経験したエリートといえば、アトランタ五輪アマレス金メダリストのカート・アングルでしょう。
2006年に競合団体TNAに移籍する以前、1999年に鳴り物入りでWWEデビューしたカートは、1年足らずで最高峰WWE王座を獲得。しかし、トリプルHの妻ステファニーと不倫するわ、敗者髪切り戦に負けてツルッパゲにされたらヅラで平然と登場するわ、放水車でミルクを撒き散らすわ、ゲイと疑われる発言を避けようとして意識し過ぎて言い間違えて墓穴を掘るわで、誰もが認める「本物のエリートだけど生真面目な性格のトンチキ」というギミックを全うしました。
ただ、本作のバカルーとその仲間たちは、超展開にも涼しい顔で立ち向かう本物の紳士かつエリートであって、演出上トンチキ要素はあくまでゼロ故に、スベってる感が凄いのである。
カート以外でプロレスネタが浮かんだ要素といえば、本作中盤に登場する衝撃のエアパッキン製遮光マスク! 形状的にプロレス史上最低のギミック筆頭に挙がるアルド・モントーヤのマスクぽくて、個人的に強烈に腹がよじれました。
さて、のちのヒット作『ロボコップ』のカクカク演技を彷彿とさせるP・ウェラーの、プッシュされてるけど気持ちに身体がついてこない若手レスラー的なソルティ演技と、ベルトは確実に貰えないけど、久々の起用でやたら張り切ってる中堅レスラー的な赤族ボス役ジョン・リスゴーの対比が光る本作。
後年、P・ウェラーは前述の『ロボコップ』、赤族幹部を演じたクリストファー・ロイドは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のドク役、バカルーの助手を演じたジェフ・ゴールドブラムは『ザ・フライ』の主人公といった当たり役をSF作品でそれぞれ得ており、不思議な縁を感じないでもないところ。
尚、本作の最後に続編予告が出ますが、製作には至らず、後年のTVシリーズ企画もCGパイロット映像のみで頓挫。某トマトな批評サイトでは「続編頓挫映画・トップ5」第1位に選ばれております。勿論、「そりゃ頓挫すんだろ」的ニュアンスだけども!(※)
(文/シングウヤスアキ)
※某トマトサイトでの本作自体の評価は何と驚きの71%で"新鮮"判定。84年度のラジー賞にはノミネートすらされていない良作扱いです。