引退したのにすぐ復帰しちゃうのがプロレス界!的なことを思い出す『スパイ・ハード』
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今回のお題は、引退したスパイが復帰して活躍する『スパイ・ハード』(1996)。主演の故レスリー・ニールセン御大が(裸の銃シリーズなどで)得意とするパロディモノで、どこかで観たことがある有名シーンや古典ネタなどをひたすらぶち込んだノンストップ・コメディです。
かつて諜報員だったスティール(ニールセン)は、世界征服を狙うランカー将軍の爆殺任務に成功するも、その任務時に恋人の命を救えず、最後の任務でもヘマをやらかし引退。ところが、死んだはずのランカー将軍が復活。かつての恋人の娘であるバーバラが捕らえられたこともあり、スティールは諜報員に復帰し、各地でハチャメチャな騒動を起こしつつ、宿敵のアジトに潜入する・・・といった感じのお話。
プロレスでの復帰劇といえば、ショーン・マイケルズが椎間板ヘルニアなどを理由に引退するも3年後に復帰し、第二の黄金期を迎えた事例があります(2010年に2度目の引退)。過去に数回引退した説もあるリック・フレアーに至っては、WWE番組上で感動的なストーリーを経て2008年に引退。多くのファンの涙腺を刺激したものの、数カ月後には乱入レベルで徐々に復帰し、2009年にはシレッと完全復帰(WWE登場時は引退した立場を守っている)。フレアーにとっては引退はネタみたいなものとされています。
本作のスティール同様に周囲に望まれて復帰するケースだと、集客力を期待するプロモーター側の要請が大きかったりしますが、そうではない中堅層にとっては"半ば引退状態"から止むに止まれず復帰のパターンが多い模様。勿論プロレスが好きだから、というのもあるでしょうが、身体的にも精神的にも追い詰められて身を崩す悲しい事例も(※)。
また、俳優業に手を出す選手が多い印象もありますが、実際には端役が関の山のようです。
さておき、開幕から終幕までほぼ30秒に一回のペースでベタネタを突っ込んでくる本作ですが、おかげで後半になると免疫が出来て苦笑いに変わってくるのが判るほど。
売りであるパロディネタは、『007』に始まり『パルプ・フィクション』『トゥルー・ライズ』『ホーム・アローン』『天使にラブソングを』などなどですが、これがまあ見事に低クオリティなので、「史上最悪のクソ映画」という評価も否定出来ないポンコツ振り(筆者は嫌いじゃないですが)。
ついでに、ヘリパイロットにミスターT、『スピード2』もどきシーンで何故かレイ・チャールズ(本物)、レストランのシーンでパット・モリタ(『ベスト・キッド』のミヤギさん)、クライマックスシーンには唐突にハルク・ホーガンがタッグパートナーの体(てい)でカメオ出演するほか、アル・ヤンコビックのテーマ曲辺りもオッサン世代にはウホっと来るであろう本作。若い世代にも"温故知新な珍作"として触れてみて欲しい一作であります。
(文/シングウヤスアキ)
※ケガによる身体の痛みや精神不安を紛らわせるために、薬物やアルコールに手を出して身を滅ぼすケースや、現役時代の無理が祟って心臓に負担を抱える選手も多く、名前を聞かなくなったと思ったら訃報が届くという悲しいニュースがここ数年続いています。