この社会は『アザー・ガイズ』が支えてるけど、スターが必要な世界もある。そうWWEとか。
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今回のお題は"その他大勢"の奮闘をテーマにした映画『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』(2010)。サタデー・ナイト・ライブ出身のウィル・フェレルとハンサムゴリラことマーク・ウォールバーグを主演に、当コラムでお馴染みの"ザ・ロック"ことドウェイン・ジョンソンも(序盤だけ)登場するアクション・コメディです。
映画顔負けの捕物劇でニューヨークの話題をさらうスター刑事コンビがまさかの殉職。野心だけはいっちょ前の窓際刑事テリー(M・ウォールバーグ)が空席となったスター刑事の座を狙って躍起になる傍ら、冴えない相棒のアレン(W・ファレル)が著名投資家の軽微な不正行為に気付いたのをキッカケに巨額詐欺計画の存在を掴むことに。果たして2人は事件を解決し"その他大勢(アザー・ガイズ)"扱いから抜け出せるのか・・・というお話。
本作冒頭でスター刑事コンビが事件を総取りして残りの署員はその他大勢、という状況が語られますが、プロレスで喩えると、ちょっと前までのWWEがまさにこれ。
2002~2010年前後。スティーブ・オースチンら近年WWEの黄金期に当たる"Attitude"世代、その前の黄金期のハルク・ホーガン世代の大物の出入りが激しかった一方で、シナ、エッジ、オートン、バティスタがトップに成長するも、彼らが重用され過ぎた結果、同世代の中堅や下の世代が長らくその他大勢未満の状態となり、ほとんど離脱か解雇の憂き目に・・・(※)
さておき、そのスター刑事の殉職でトップの座が空くワケですが、WWEの場合だと、旧世代の大物勢が消え、さらに脂の乗った世代であるバティスタの離脱、エッジの引退で空席が生まれた2010~2011年辺りが重なります(CMパンクやダニエル・ブライアンがその穴を埋めています)。
ただ、本作の主人公コンビは元がポンコツなため、穴を埋めるどころか、巨額詐欺事件の尻尾を掴みながらも、同僚の嫌がらせや黒幕の妨害でさらなる窓際部署である交通課送りに。
WWEで喩えると、タッグ王座獲得間近と期待されながらも、突然人気が沸騰したケインとブライアンのチーム・ヘル・ノーに先を越され、気付いたらジョバー要員送りとなったプライムタイム・プレーヤーズ(PTP)が浮かんで来ます。
主人公コンビはそこから再び立ち上がり事件を解決。スターになれずとも名も無き"その他大勢"たちが社会を支えている、という結びとなる本作。
WWEも構造としては同じですが、前述のようにスターが生まれないと会社が沈み兼ねないので、若手不毛時代にジョバーユニットの一員としてデビューしながら、今年ついにトップスターとして開花したドルフ・ジグラーの奇跡を目標に頑張れジョバリスト!
ちなみに、フェレル演じるアレンが学生時代にポン引きをやっていた過去から離れるために警察の会計課というお堅い仕事を選んだ設定がアクセントになっているんですが、ポン引きギミックの「ゴッドファーザー」が低俗表現検閲ユニット「RTC」加入で健全キャラ「グッドファーザー」に転身したネタを思い出したのでした。
(文/シングウヤスアキ)
※2010年の若手育成ブランド「NXT」立ち上げを前後して「ダメなら解雇」というケースが減り、ようやく新世代が定着するようになりました。