1999年の超爆死作品『ダドリーの大冒険』でケヴィン・ナッシュの黒歴史を思い出す
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歳を重ねると自らの黒歴史が過ぎり、そこら辺の壁をぶん殴りたくなる時があるものですが、作品として記録が残ってしまう俳優となれば、大物であるほど「これは黒い」と断定せざるを得ない出演作品が見つかるもの。そこで今回のお題は『ダドリーの大冒険』(1999)なる珍作であります。
60年代のカートゥーンの実写化コメディで、映画本篇もベタな笑いが散りばめられ、"永遠のとっつあん坊や"ブレンダン・フレイザーを主演に、ヒロイン役にサラ・ジェシカ・パーカー、謎の重要人物に『モンティ・パイソン』のエリック・アイドルなどキャスト陣も売りだった模様。
舞台はカナダの田舎町。幼馴染の少女ネルを巡り因縁のあった騎馬警官志望のダドリーと悪党志望のスナイドリー。時は過ぎ、悪党となったスナイドリーが金鉱発見話をでっち上げて町を実効支配すると、美女になって帰郷したネル(S・J・パーカー)を我が物にし、騎馬警官となっていたダドリー(B・フレイザー)を解雇に追い込むことにも成功。
打ちひしがれるダドリーだが、謎の世捨人キム(E・アイドル)の元で修行を積み、愛する町と最愛のネルの奪還に挑む・・・というテンプレストーリー。
さて、プロレスラーも黒歴史が世に残り易い因果な商売。レスラーの場合、最も成功したギミックがパブリックイメージとなるため、真逆のイメージのギミックはほぼ確実に黒歴史リスト行き!
チョイ悪オヤジ系で売るケヴィン・ナッシュからはまったく想像出来ない「OZ(黄緑色のマントに白ヒゲの巨人)」のようなキッズ向けギミックは最も分り易い例で、ファミリー受けを狙った本作『ダドリーの冒険』は、この「OZ」タイプと言えましょう。
同年公開の『ハムナプトラ』で一躍知名度を上げたフレイザーの兄貴と、『セックス・アンド・ザ・シティ』で話題の女優となるサラ・ジェシカ・パーカー姐さんという旬の2人の共演が実現した作品だったことも考えると、ポスト・タイガーマスクとしての期待値に反比例するソルティな凱旋デビュー戦を演じてしまった「ザ・コブラ」的な黒歴史感とも似ています(相手選手が台本通りにやらなかったためだそうですが)。
さらに本作は、漫画/アニメ原作の実写映画における「オリジナルを尊重して映像にしてみたら学園祭の出し物レベルだった」的黒歴史感も完備。また、舞台設定は現代なのに開拓時代かと見紛うような衣装やセットが脈絡なく登場するため、最後まで観続けるには相当な集中力が求められます。そこに来てパーカー姐さんの顔の長さに気付いてしまうともはや罰ゲームを強いられているのと同義。
「OZ」のショッパイ試合ならブーイングでもすれば気も晴れたでしょうが、本作の場合、画面に向かって文句を言うだけ負けた気分にしかならない!クソが!
本作関係者にとって最大の黒歴史要素といえば、7000万ドルという超話題作並の製作費を投じて、米国内興収が100万ドルに届かずという超爆死っぷり(※)かと思われますが、主にカナダ製作のせいか1999年度のラジー賞から完全スルー。同年5部門制覇の『ワイルド・ワイルド・ウエスト』の5倍はクソなのに!
(文/シングウヤスアキ)
※同年(1999年)公開のヒット作『シックス・センス』が製作費4000万ドル、米国内興収のみで約3億ドル(全世界で6.7億ドル!)