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プロレス×映画

プロレスラー出演シリーズ:沈黙のロッキー山脈! スティーブ・オースチン『ザ・ハンティング』

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 元プロレスラーの映画スターといえば、ザ・ロックことドウェイン・ジョンソンがパッと浮かびますが、ロック様より先にWWEで一時代を築いていたストーンコールド・スティーブ・オースチンもそのひとり。現役時代の『刑事ナッシュ・ブリッジス』出演に始まり、数本の主演映画の他、近年では『CHUCK』などの人気TVドラマにゲスト出演するなど、ロック様ほどではないにせよ地道に俳優業活動を続けています。

 ということで、久々の"プロレスラー出演映画"シリーズは、そのオースチン主演作『ザ・ハンティング』(2010)。レスラー主演映画のテンプレ通り、米国本国ですら劇場未公開のビデオスルー作品ではありますが、『エクスペンダブルズ』ファンの方ならきっと楽しめるはずです。悪役側ボスを務めたエリック・ロバーツが国境警備隊時代の同僚(開始8分で死亡!)として、悪党仲間役だったゲイリー・ダニエルズ(実写版『北斗の拳』ケンシロウ役でやや有名)が本作では強盗団のメンバーとして登場。つまり「オースチン需要」と「エクスペンダブルズ需要」が見込まれた作品なのです。

 テキサス国境警備隊での職務中に親友を失ってから4年、ロッキー山脈山岳パトロール隊員に転属し、私生活では反抗期の一人娘に手を焼いていた主人公(オースチン)。その平穏な日々も、ラスベガスのカジノから強奪した金を持ち逃げして国境越えを狙う裏切り者と、それを追って来た強盗団の出現により一変。人質になった愛娘を救うべく、"山のハンター"となり、強盗団をひとり、またひとりと狩っていく......。

 的なお話なんですが、監督のキオニ・ワックスがスティーブン・セガール作品を数本手掛けている人物ということもあってか、言うなればこれは『沈黙のロッキー山脈』!
 人質になった娘とは他人を装い、山の案内役を買ってでたオースチンですが、金を回収して用済みになるや脇腹を撃たれ、崖下へ転落......。しかし、ロッキー山脈が生み出すミネラル満点の川の水で超回復を果たしたのか、ちょっと身体が痛いなぁ程度のダメージで川から上り、運良く武器も手に入れれば、ハンターモード覚醒です。

 殴る蹴るが主体のレスリングスタイルが特徴だったオースチンなので、アクションに関して洗練さは皆無。そもそも現役時代から首と膝が悪かったため、走るシーンはドタドタと重く、キレのない格闘シーンはだいたい力技か小道具使って強引決着。しかし、レスラー出演映画のお約束通り、アームロックからアームブリーカーにレッグブリーカーのダメ押しコンボもあれば、ダニエルズとの一騎打ちではロー・ブロー(金的攻撃)を食らうシーンもあったりと、プロレス要素はしっかり完備しています。
 この辺り含めて、完全無欠のセガール大先生に比べ、ピンチが多すぎるオースチンですが、相手の攻撃も受けて盛り上げることが大事なプロレスラーならではといえましょう。そう、きっとそういう演出意図に違いない!

 WWEの会場でも乗り回していた「ATV(四輪バイク)」が大事なシーンで登場したりと、「オースチンといえば」な要素が散見される本作だけに、オースチンの人となりを知らない人が観たら、モッサリしたオッサンが主役のB級映画であることは否定出来ません。ところが何の因果か、オースチンとセガール大先生の夢のW主演作『沈黙の監獄』が国内でも1月から公開され、さらに『エクスペンダブルズ』で共演した(確か絡んだシーンはないけど)ドルフ・ラングレンとのW主演作『マキシマム・ブロウ』も2月公開を控えているので、本作『ザ・ハンティング』でオースチンの雄姿を確認しておくのもオツかもしれません。
 むしろ「このモッサリ感が堪らない!」となる筈だから!(希望的観測)

(文/シングウヤスアキ)

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シングウヤスアキ

会長本人が試合までしちゃうという、本気でバカをやるWWEに魅せられて早十数年。現在「J SPORTS WWE NAVI」ブログ記事を担当中。映画はB級が好物。心の名作はチャック・ノリスの『デルタ・フォース』!

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