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プロレス×映画

『山猫』シリーズのトーマス・ベケットは"省エネ系"タッグ職人

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 TVや映画でよくある「バディ物」。プロレスで言えば「タッグチーム」ですが、「バディ物」というと、凸凹コンビがシリーズを重ねてお馴染みのコンビになっていくパターンと、企画の都合や大人の事情やら何やらで相棒が変わる形でシリーズが続くパターンがあります。『リーサル・ウェポン』『ラッシュ・アワー』『MIB』シリーズ辺りが前者とすれば、今回のお題『山猫は眠らない(以下、山猫)』シリーズは後者。
 『山猫』シリーズは、原題(『Sniper』)通りスナイパー(狙撃手)の特殊性と心情に焦点を当てた作品で、トム・べレンジャー演じる伝説の狙撃手「トーマス・ベケット」が全4作中3作で主人公として登場します。

 軍属に籍を置く狙撃手は、情報観測&支援要員である観測手と二人一組で任務に当たるのが常だそうで、"ミスター・レジェンド"ベケットの相棒を務めたのは・・・

パナマ軍事政権の要人暗殺任務となる1作目(1993)では、腕は良いけど現場経験ほぼゼロで送り込まれた新人。
バルカン半島で想定外の任務となる2作目(2002)では、作戦成功なら恩赦を得られる元陸軍兵士の死刑囚。
テロリストになった元親友に決別の引き金を引けるかが肝となる3作目(2004)では、現地であてがわれたベトナムの若い刑事(実は諜報員だけどまさかの狙撃能力ナシ)となっており、作品毎に違う相棒との軋轢や共闘も『山猫』シリーズの醍醐味。

 ベケットのようにプロレスでも、ベテランになるにつれ若手と組むことが多くなるのは自然の摂理。かつて全日本プロレスのジャイアント馬場がその世代毎のエース候補を指導するため、ジャンボ鶴田、三沢光晴、小橋建太とコンビを組んでいましたし、現行のWWEに話を移せば、ベテランの域に達したレイ・ミステリオが伸び悩む若手のシン・カラと組み人気定着を狙う新旧メキシカンコンビもこの組み合わせ。

 とはいえ脇役のイメージが強いべレンジャーの「トーマス・ベケット」は、プロレス的には馬場さんやミステリオのような人気者ではなく、WWEで数々のタッグやユニットを経験した"タッグ職人"ハードコア(ボブ)・ホーリー、或いは90年代ならジョニー・スミス的というのが個人的帰着。多くを語らず、試合だけで魅せる彼らのレスリングスタイルも、寡黙なベケットと重なるところです。

 ちなみに1作目の頃は敵に見つかった相棒を助けるために、敵狙撃手にCQC(近接格闘)を挑むほどアクティブだったベケットさんでしたが、シリーズを追う毎にほとんど相棒任せ!
 しかし、プロレスの若手&ベテランコンビでも、試合のほとんどを若手の相棒に任せて最後だけベテランがキッチリ締めるのはよくあること。つまりベケットは"省エネ系タッグ職人 "なのです。そりゃ若い相棒が大事なところで焦って、2作目はアレしちゃうし、3作目も初歩的ミスで窮地に陥るワケですね。

(文/シングウヤスアキ)

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シングウヤスアキ

会長本人が試合までしちゃうという、本気でバカをやるWWEに魅せられて早十数年。現在「J SPORTS WWE NAVI」ブログ記事を担当中。映画はB級が好物。心の名作はチャック・ノリスの『デルタ・フォース』!

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