「これ、あれに似てね?」的アハ体験はプロレスなら当たり前!
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それなりに映画を観るようになれば誰しもが感じる「この映画、あの映画に似てね?」的アハ体験。パクリかオマージュかはともかくとして、テーマやプロット(物語の枠組み・構成)が似通った作品は「~モノ」だとかジャンルとして認知されますが、今回のお題である『ガントレット』(1977)と『16ブロック』(2006)は、いわゆる「証人護送モノ」。前者はクリント・イーストウッド監督・主演、後者はブルース・ウィリス主演の別作品です。
共通項は「風采の上がらない主人公(ダメ刑事)がほろ酔い状態で登場」「タダの証人護送がまさかの事態に発展(主人公がたまたま最初の危機を回避したことが騒動の始まりに)」「身内の警察関係者がもみ消し工作(初見から怪しい)」「奪ったバスで特攻クライマックス(乗客は全員解放)」と、リメイク作品でもないのによくもここまで似通ったものですが、勿論、違う部分もあります。
『ガントレット』は証人が女性(娼婦)、行程はネバダ州ラスベガスの警察署からアリゾナ州フェニックス市内の裁判所まで。
『16ブロック』は証人が男性(ケーキ職人志望)、行程はニューヨーク市内の警察署から同市裁判所までの僅か16ブロック。
行程の関係で前者は一泊二日で進行するのに対して、後者は上映時間内でほぼリアルタイム進行。この物語内での時間進行の都合もあり真相が明らかになる過程と解決方法も違います。
プロレスにも「この抗争、あの抗争に似てね?」的アハ体験はあります。あり過ぎます。これはプロレスの場合、いわば歌舞伎や舞台演劇のように顔触れや細かい味付け(試合形式や条件)を変えて頻繁に「同じ演目」を繰り返すため。
基本的にファンが見慣れたプロットを用いた方が感情移入を誘い易いワケで、ケガから復帰した選手は「復讐モノ」の抗争。ベビーフェイスからヒールへ転向する選手には「逆恨みモノ」、その逆なら「人助けモノ」。女性マネージャ付きの選手には「三角関係モノ」といった感じに。
そして見慣れたプロットであればこそ「こうなるだろう」というミスリードによって受け手の予想を裏切れるため、WWE辺りでは「今回はベタオチで来るか、サプライズオチで来るか」という楽しみ方が出来るのです。
ちなみにこの裏切りの法則で『ガントレット』と『16ブロック』を観た場合、前者が期待通りのエロシーンがあったのに対し、後者は証人が黒人男性だからそもそもエロシーンなしというのが最大の裏切り......というのはアレとして、前者の「いやいや死んでるって!」とツッコずにはいられないバス特攻シーンに対して、後者はオープニングシーンの意味が判る演出で涙を誘うと同時に「そう来たか」というシーンに。
プロレス的に言うと、前者の圧巻かつシュールな結末が投げっぱなしジャーマンでKO勝利なら、後者はオチ的にもほっこり出来る納得の形の結末でジャーマンスープレックスホールドで奇麗にフォール勝ちといった感じになっております。
(文/シングウヤスアキ)