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二階堂武尊のB★CINEMA ブッダものけぞる映画笑論

第25回 桐島は本当に実在したのか?〜『桐島、部活やめるってよ』

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 どーもどーも。2014年始まりましたねえ。新年の目標立てましたか? 私は新年の目標を立てないことを目標にしました。もう今年は、365日、その日暮らして、その日その日に全力投球です。昨日のことも、明日のことも思い煩う人生からおさらばです。「いま」に全神経を集中する訓練をしたいと思います。

 さて、この『桐島、部活やめるってよ』は本サイトでもほかの執筆者の方がすでに書かれているということですが、あんまり素晴らしい作品のなので、私にも少々語らせてください。

 私はこの作品を見たとき、なぜか相米慎二監督の『台風クラブ』を思い出してしまいました。これも素晴らしい作品なので、ぜひ見てくださいね。

 このふたつの映画に通底するものは、思春期の男女が思い描く「完全性」と「永遠性」への希求です。『台風クラブ』の方が、時代を反映してか、濃密で、ある意味、重い作りになっています。一方『桐島』は現代の高校生の会話やコミュニケーションの妙がリアルに表現されていて、軽めで心地良い。でも、大きな問題を抱えた作品です。

 主人公のまわりにいる男女は、桐島という、成績もよく運動も抜群に秀でた青年の不在で、少しずつバランスを崩していきます。そして彼らは一向に姿を現さない桐島を待ちきれず、破綻していく。

 桐島って、どこに行ってしまったんでしょうね。

 私は思うんです。桐島って、元からそんな男いなかったんではないかって。
 みんな「桐島」という存在に「完全性」と「永遠性」という実在するはずもない大いなる「夢」を見ていただけではないかと。

 確かに、桐島がいれば、学校はすべて平和に進んでいくように見えそうです。でも、そんな存在、この世にいるはずもないのです。ちょっと大げさになりますが、この学園は、神なき現代日本の縮図と言ってもいいかもしれません。

 生徒たちは桐島がいないことで動揺して不安を抱えながら、仲間と激突していきます。「桐島さえいれば......」、でも桐島なんて実在しないのです。仲間と激突して、コミュニケーションを築き上げていくことこそ、思春期の男女のもっともやるべきことで、「桐島」みたいな存在がいないからこそ、それは成立するのだと思います。

 とはいえ、「完全性」と「永遠性」への欲求は、若者の特権です。それをつかめないまま、挫折と再生を体験していく男女を描いた点で、その表現方法を含め私はこの作品を愛します。

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二階堂武尊(にかいどう・たける)

1964年生まれ。大手出版社勤務の後、独立。近著に『29歳からはじめる ロックンロール般若心経』(フォレスト出版)、『ぎゅーたん!「十牛図」で学ぶプチ悟りの旅』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。リストラ、転職や借金、それらにともなうメンタルな病理などに、長いサラリーマン体験を生かしたユニークな対処法を提案。高校生から中高年まで幅広いファンの支持を得る。一見、ふざけているのかと思われる作品群の奥に、仏教的な癒しや悟りの感覚を漂わす。ブルースとジャズを愛する陽気なオッサン。無類の犬好きでもある。
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