第26回 世界は「妄想」が動かしている。 〜『中学生円山』
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禅の世界では、「莫妄想」(まくもうぞう)などといい、妄想することをカタくご法度としています。
それは妄想の持つ力が途方もなく強力なのを、歴代の禅のマスターたちが熟知していたからでしょう。
中学生という時代は、妄想が現実を凌駕する、もっとも想像力が研ぎ澄まされているお年ごろなのかもしれません。そんな中学生も妄想を盛んにする時期を過ぎ、大人になりやがて現実に押しつぶされて、妄想することを諦めていきます。そして、無味乾燥なつまらない大人へと成り下がります。
それにしても、この映画の舞台となった団地の人々は、大人も子どももしきりに妄想してますな。健全です。
主人公・円山少年にとってのヒーローである、草彅剛演じる「子連れ狼」の存在は、私にとって新鮮でした。
現実を超えて妄想を生きろ、とハッパをかける草彅は、実は、正義を生きる殺人犯。大人としてはありえない大人。彼の好演が光ります。円山少年はそんな彼によって励まされ、妄想の翼をひろげていきます。そして、自分のおちんちんをしゃぶるという妄想を現実にやってのけたのです。
最近、私は、妄想する自分をとがめないように心がけています。
「そんな妄想、ムダ。時間の浪費」と思わないようにしています。
脳科学的に言っても、脳はリアルと妄想の判断がつかないという説もありますね。だから、脳をだまして、快楽を得ればよいのです。
だったら、日常を超え、激しく妄想する世界を生きるのも、タフでハッピーな生き方かもしれませんね。
職場にいる手の届かないあの人を抱く。
大金持ちになって、女たちを侍らす。
社会の許さぬ禁断の愛を成就する。
そういうイマジネーションを押し殺して、ストレスをためるのなら、大いに妄想して、楽しいひと時を過ごすのも一興です。
明日何が起こるか予測不能の今日このごろ。
先のことを憂いて暗くなるより、いまのこのひとときを愉快に過ごすのが、最良の健康法ではないかと妄想(笑)したりしています。
あらゆる文化や芸術もひとりの人間のやむにやまれぬ妄想から生み出されてきたことは間違いありません。妄想は少年にとってだけでなく、大人にとってもマスターベーションと同じくらい心身に健康な効果を与えてくれるでしょう。